第47話土のダンジョンランクⅣ③

「いよいよ最奥まで来たな」


 僕らの前には大きな扉がある。


「ここにボスがいるのよね?」


 魔法使いさんが確認をする。


「ええ。クランの偵察の話だとボスは【ダイヤモンドゴーレム】ですね」


 治癒士さんがそれに答えた。


「物理防御に特化した硬い奴だが、討伐経験が無いわけじゃないからな。だからと言って油断するのは論外だ。お前ら気張っていくからな」


 トーマスさんが皆の気を引き締めにかかる。

 流石はランクⅣに挑むだけあってなのか、トーマスさんが言うまでもなく皆の顔つきに油断は無い。


「エリク君は私と後ろで見守りましょうね」


「……わかりました」


 治癒士さんが微笑みかけてくるので笑顔で返しておく。


「よしっ! これが終わったら酒場にでも繰り出すか!」


「団長の奢りっすね! やったぜ」


「いつも通り呑み比べ勝負よ」


 そう言って突入していくのに僕はついていくのだった……。







「はっ! くそっ……かてえっ!」


「正面からは無理っ! 団長が傷つけた場所を重点的に狙うのよっ!」


「風の魔法で援護しますっ!」


「スナイプシューティング!!」


 トーマスさんがメイスを振るい、女戦士さんと男戦士さんが側面から剣を叩きおろす。

 魔法使いさんが風魔法を使って援護するのだが、彼女の恩恵は水らしく、風の魔法は熟練度が低いようでいまいち効果が薄い。

 弓使いさんの矢だが、相変わらず神がかった精度で味方の間をすり抜けるとダイヤモンドゴーレムに確実な傷をつけて行く。


「支援魔法が切れそうな人は戻ってくださいっ!」


 治癒士さんも僕の傍にいるのだが、回復に支援魔法と忙しそうにしている。


(退屈だな……)


 素直な感想をイブに言う。


『仕方ないですよ。マスターが手伝ったら不自然ですもん』


 確かに荷物持ちとしてきているのでここで手を貸すのはどうなのかとも考える。

 これが圧倒的なピンチならば人命優先なので仕方ないのだが、トーマスさん達は善戦している。


 以前に討伐をしたことがあるというのは本当なのだろう。

 硬いダイヤモンドゴーレムを崩すために1点集中で攻撃をして既に両腕を破壊している。

 流石に疲労こそ溜まってはいるが、それでも負ける要素が見いだせない以上は僕の手助けなんぞ余計なお世話にしかならない。


(でも、せっかくだから試したかったんだけどな)


 僕の丸太で殴り掛かった場合ダイヤモンドゴーレムはどのぐらいの飛距離を出せるのか?

 それでなくても初めて見るモンスターなのだ、一度は戦ってみたかった。


『せっかく【神殿】で祈ったのに生かす場面が無いのは勿体ないですよね』


(……まあね。この結果も気になってはいる)


 今朝がた、皆が起きる前にルームに戻った僕は【神殿】に祈りを捧げた。

 その時に得た祝福なのだが……。



 ・パワー200%アップ×2


『ランダムで2つって重複するんですね』


 イブの言う通り。現在の僕は触れると危険なパワーアップをしているのだ。

 だからこそあのゴーレムと力比べをしてみたかったのだけど、裏方は最後まで裏に徹することにする。


 そんなわけで、うずうずしながらボス戦を見守っていたのだけど……。


「よしっ! ボスを倒したぞっ!」


 トドメの一撃を放つとゴーレムが倒れ、消滅していく。


 トーマスさんがメイスを振り上げると勝ちどきを挙げた。


「やった【ダイヤモンドソード】をドロップしたわ!」


 女戦士さんの指摘の通りゴーレムが崩れ落ちた場所には魔核と共に綺麗な輝きを放つ剣が落ちていた。

 名前の通り、ダイヤモンドで作られた剣なのだと思う。


 ダンジョンのボスは何らかのアイテムをドロップすることがよくある。そしてドロップされたアイテムというのは大抵高額で取引されるマジックアイテムだったりするので、この時点で彼らのダンジョン探索は大儲けが約束されたようなものだ。


「皆さん怪我は無いですか?」


 戦闘が終わったので、治癒士さんが皆の治療に向かっていく。戦闘中は完全に癒す時間が無かったのだが、へたりこんでいるトーマスさんなどは結構怪我を負っていたらしい。

 後は奥のテレポーターで帰るだけなので慌てる必要はないだろう。

 僕がそんな風に考えて彼らを見ていると………………。


「お前ら、武器を捨てな!」


 いつの間にか10人ほどの悪人面の男達が背後に立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る