第119話星降りの夜4日目
「それで、現状はどうなっている?」
僕は欠伸をもらしながらイブに外の状況を聞いてみた。
「そうですね。マスターが色々手配したお陰なのか、大きく崩れている場所は無いようですよ」
「それは上々だな」
イブは自分の姿を鏡に映してポーズをとりながらもそんな答えを返してくる。
やがて満足したのか仮面を身に着けると――。
「モンスターの召喚される時間も120分に変更になったようですよ」
「それは相当楽になった気がするんだが……」
初日は15分おきにモンスターが召喚されたのだが、元々溜まっていたせいか数が多く排除するのに相当な時間を要した。
2日目からは30分おきになったようで、各クランは自分達のベースに召喚されたモンスターを倒しては周囲を巡回して前日倒しきれなかったモンスターを確実に排除していった。
3日目になると60分おきの召喚へと変わった。このぐらいになってくるとモンスターの強さもCランクとなり集団で戦う必要が出てくるのだが、伊達にアルカナダンジョンに挑むメンバーではない。
一部の野良参加者の中には実力が足りずに離脱する者もいたのだが、他のベースでも召喚制限時間内で討伐ができているようだ。
「それを言えるのはマスターを含めた一部のトップだけですけどね。留まっている人間の9割は必死でやってますから」
実際、攻撃力の高い武器や硬い防具。威力のある魔法に豊富な支援が無ければ短時間での討伐は不可能なようだ。
全員がその手の武器や防具を保持するのは不可能であり、そういった実力差が露わになるこの先からが辛い攻略になるのは間違いない。
「タックやマリナさんにルナさん。セレーヌさんは?」
「今のところタックさんが暴れているのは見ましたけど、他は温存されているんじゃないですかね?」
その言葉に僕はどこかで安心する。友達の悪い知らせは聞きたくなかったからだ。
「それよりもだ……この魔核なんだけどさ」
無事ならばよいということで次の話題にうつることにする。
「ああ、カイザーに回収させてきたやつですね?」
それはどこかで見たことがある小さな透明の石だった。
「途中で気になったから回収してきてもらったけどこれってどう見ても……」
「ええ。特殊のコア(小)ですよねこれ」
イブの台座にて鑑定を行ってみたところ推測通りの答えが返ってくる。
目の前に置かれた石は僕が序盤にお世話になったステータスをアップさせるコアだったのだ。
「こういうのが出るなら最初に言っておいて欲しかった……」
特殊なコア(小)は使う事でステータスを上げる事ができるブーストアイテム。
仕入れようにも特殊ダンジョン自体が少なく、攻略する探索者があまりいないため数が揃わないアイテムなのだ。
これはこのダンジョンで召喚されたレアモンスターの魔核らしく、倒すとレアドロップとして床に落ちた。
レアモンスターとはいえ開始時には相当な数がいたはず。仮に10匹に1匹がレアモンスターだったことを考えると相当な数の特殊なコア(小)が転がっていたはず。
「もしかしてあの婆さんの店にあったのって……」
「多分ですけどここが産出元ではないかと?」
恐らくはこの島で産出されたものが魔法陣を描く材料として様々な国へと散らばって行ったのだろう。
「もしかすると、特殊なコア(中)と(大)ってそろそろ出る時期では?」
本日はダンジョンオープンから4日目。初日に比べるとモンスターも随分強くなっており、討伐の際に得られるレアドロップの質も上がってきている。
レアモンスターからドロップされるという特殊なコアも大きくなっていてもおかしくない。
むしろ、お婆さんの店に複数の大きさのコアがあったことからそうなのだろうとすら思う。
「でも、一般的には魔法陣の材料にするぐらいしか使い道がないって認識なんですよね?」
特殊なコアは魔道具に設置しても魔力を供給することができないせいで外れコアと認識されている。
僕みたいな恩恵を持っていなければ使い道が無いのだ。
「どうするんですかマスター。今回の目的をあくまでここのダンジョンのコアに絞って動くんですか?」
イブの質問に僕は少し思考を巡らせる。
せっかく裏から手を回してきたのだ。表舞台に出るのは最後まで我慢したほうが正体ばれしない対策になる。だが…………。
「馬鹿なことをいうな。ここで取りこぼしたら魔法陣の材料にすりつぶされるに決まってる。僕は救えるコアは全て救うんだ」
仕方ないので僕は少し作戦を変更することにした。
「でも『その魔核を売ってくれ』って言っても警戒されるだけですよ? わざわざ話を持ち掛けるのも不自然ですし、なにより姿を見せるんですか?」
イブからの疑問の声に僕は様々な問題について考えると……。
「そこでイブにやって欲しいことがあるんだよ」
僕はそう言ってコア獲得への作戦を伝えるのだった。
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