第83話火と地のランクⅤダンジョン①
「しかし…………こんなダンジョン、普通なら絶対見つからないよな」
僕は山脈に存在していた隠しダンジョンの中を歩きながら周囲を警戒する。
『そこはイブの感知能力を舐めてもらっては困ります。隠蔽されていたので解りづらくて、イブも昨日違和感を覚えるまでは気付けなかったですけどね』
実際、このダンジョンは山脈の中腹の崖下に入り口を完全に塞がれた状態で存在していた。
普通のダンジョンというのはお客さん(冒険者や探索者)を招き入れる目的があるので入り口はオープンになっている。
だが、このダンジョンはまるで人目から逃れるかのように岩で閉じており、最初からここにダンジョンがあると知っていなければ発見するのは不可能だろう。
「おかげで野良ダンジョン扱いになるからこうして僕が入れるわけだ」
探索者ギルドに登録されているダンジョンは入場が制限されているので今の僕では入れない。だが、以前攻略したデュアルダンジョンなど不可抗力で入ってしまった管理されていないダンジョンは別なのだ。
実際、野良ダンジョンをたまたま発見した探索者達が独占目的でそのまま攻略を始めることも無くはない。
発見者が探索者ギルドに報告すると情報提供料を貰えるのだが、それは大した金額ではない。
なので、攻略できる力が無ければその情報を売った方が得で、攻略できる力があるならそのまま潜った方が得なのである。
そんなわけで、今回の第一発見者の僕は当然潜る。
登録された後に攻略する場合は人数を揃えなければならないからだ。
『マスターそこ落とし穴がありますよ』
「了解!」
僕は近くの岩を持ち上げてイブが指示した場所へと投げる。
次の瞬間、岩は消え失せて地面にぽっかりと穴が開いていた。
『次、そこの壁から矢がでてくるようです』
イブの指示に従い穴を1つずつ潰していく。
『そこのタイルを踏むと爆発します』
「ほいさっと」
石を投げて壁に隠れると爆音と共にパラパラと小石が降ってきた。
それにしてもイブが全ての罠を見破るので探索が順調すぎる。
これまでもトーマスさん達との攻略で事前に罠を教えてもらうことがあったのだが、さすがにでしゃばるわけにもいかなかったのでトーマスさん達が慎重に進むのを見ていた。
1人での探索であればイブの全能力を解放できるので自然と進行速度も早まるというもの。
「それにしても妙だな…………?」
『何がですかマスター?』
ダンジョンに入ってから数時間が経過した。これまで罠を全部潰してそれなりに速い速度で進んできたのでそろそろダンジョンの半ばを過ぎていると思う。
「これまで結構な罠を潰して結構な距離を進んできたけどモンスターに一度も遭遇していない」
普通ならここまでの爆音を聞きつけてモンスターが押し寄せてもおかしくないのだが、奥から何かがくる気配すらないのだ。
『ここは火属性と地属性のランクⅤのダンジョンのようですけど、何か入った時から妙な感じがしていたんですよね』
「妙な予感ってなんだよ?」
『ダンジョンコアにも個性がありますからね。普通なら罠とモンスターを交互に織り交ぜることで人間を奥地へと誘導するように配置するんです。だけどこれまで罠しかありませんでしたよね。これだと探索した人間にはモンスター討伐によるアイテムドロップの旨味が一切なくて割に合わずに引き返すと思うんですよ』
実際、イブがいなかった場合ここの攻略にどれだけ時間がかかるのか。
少なくとも罠1つ把握するだけで数時間を要するので、何週間かはかかるはずだ。
「結局何が言いたい?」
イブの結論を聞くと……。
『おそらくですが、ダンジョンコア以外の何かが介入している気がします』
「結局、その何者かの介入はよくわからなかったな」
イブが示した根拠を裏付けることなく更に数時間進むとダンジョンの最奥が近づいてきた。
ここまで1度も戦闘することなくきた僕だったが、ショートソードを片手に警戒心を高め進んでいる。すると…………。
『マスター。奥に敵がいます…………その数512です』
「はっ?」
僕は思わず聞き返してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます