第95話施設充実のためのお買い物
「いらっしゃいませ、家庭用のコアをお求めでしょうか?」
あれから、銀行で現金を受け取った僕はその足でコアショップへと足を運んだ。
家庭用の魔導具ならばランクⅠかⅡのコアで数年はもつ。なのでこういったコアショップは常に低ランクのコアをいくつも仕入れている。
「あっ、業務用のコアなんですけどありますかね?」
だが、僕が欲しいのは自分の恩恵をパワーアップさせるためのダンジョンコアだ。
これまでの傾向としてランクⅣまでのコアは属性魔法を会得できるものに限られており、Ⅴ以上のコアと特殊ダンジョンのコアが恩恵やスキルに対応しているのだ。
「そうですね、当店ではダンジョンランクⅤのコアが2つあります。あとはⅣ以下になりますね」
「じゃあランクⅤのコアを両方とも買います。現金払いで」
その返答に僕は迷うことなく現金を支払うのだった。
「すいません。ちょっと良いですか?」
「はい、どうぞ」
あれから店を移動した僕は錬金専門店へと移動していた。
自国と違って可愛らしい女の子の店員さんが店番をしている。あちらの店もお婆さんは僕に良くしてくれるのだが、こうした接客も新鮮で気分が高揚する。
「そこの錬金関連の魔導具をここからあそこまで全部購入したいです」
「ふぇっ!?」
見た目なら16歳の男の子が現れて突然大人買いを申し出たのだ、店員の女の子の態度はある意味当然と言える。
「よ、よろしいのですか? その……かなり高額になりますけど?」
その言葉に僕は…………。
「平気です。現金で払いますね」
笑顔で応じるのだった。
「それにしても……中々便利そうな恩恵ですね。羨ましいです」
店員の女の子の前でフェイクルームを開いて道具を運びこむ。
イブは相変わらず忙しそうなので、今回は自分でやっていた。
「そうですか? アイテムを収納できる恩恵なのでこうして買い出しとか引っ越しに利用してもらえるので確かに助かってはいますね」
実際は自分で使う道具なのだが、こう言っておいた方が不自然さがない。
恩恵を利用して仕事をしていると思ってくれるだろう。
「よし。これでおしまいっと」
「あ、ありがとうございます。またのご利用をお待ちしています」
店員さんは満面の笑みを浮かべると僕を送り出してくれた。
「さて、次は……鍛冶関連の道具の買い占めを……」
この機会にザ・ワールド内の設備を完全にしておく。僕は鍛冶屋を訪れると鍛冶に必要な魔道具を一通り購入すると……。
「なあ兄ちゃん……」
「なんですか?」
熱を発する炉の魔道具を持ち上げているとおっちゃんが話しかけてきた。
「それ……重くねえのか?」
僕は首を傾げると……。
「平気ですよ? 重い物には慣れてますからね」
こんなのを重いと言っていたらヴェライトでコーティングされた丸太は振り回せない。
「いや……慣れって……大人が数人でもきつい……」
「どうかしましたか?」
何やらぶつぶつと考え込むおっちゃんに涼し気な顔で聞き返すと。
「そういう恩恵なのか……? いや、悪いな手を止めさせちまって」
なにやら勝手に納得してくれたらしい。僕は魔道具を運びこむのだった。
それからも、様々な店に突入しては僕は目につくものを片っ端から買いあさっていく。
これまで買い控えていた様々な道具はザ・ワールドでの生産性を高めるだけではなく、僕が目立つアイテムを作ったりする秘密を守ることにも繋がる。
購入するたびに「おつかいです」と言ってあるので、派手に買ったところで言い訳も問題ない。
資金が豊富にあり、ショッピングが楽しくなった僕はここぞとばかりに買い物を楽しんでいく。そして…………。
「さて、いろいろ買ったしそろそろやるか」
必要アイテムと必要ではないアイテムの購入を終わらせた僕はザ・ワールドへと戻ってきた。
各種の設備はひとまず大雑把に移動しておいたので後でイブに整理をお願いしよう。
新たに買い付けてたダンジョンコアの解析もイブ頼みとなるので後回し。
「まずはこっちの石からやってみるか」
最初に銀行から引き取ってきた使用済みのコアを見る。
箱に入っているそれは魔力を絞り取られた残りカスらしく、処分の際に爆発の危険があるので定期的に依頼をだして火山に捨てに行くのだ。
僕はその使用済みのコアをどうにかできるのではないかと考えたのだ。
「クエエエー」
1日動き回っていたせいでカイザーが構ってほしいとばかりに箱に入った使用済みコアをくちばしでつつく。
「こらっ! つつくなっ!」
「クエェ~」
おもちゃとでも思っているのか、カイザーは使用済みコアを1つ加えるとどこかへと行く。
「キュルルン?」
次に現れたのはキャロル。
つぶらな瞳で鼻をひくつかせると…………。
「食べるなっ!」
使用済みのコアを両手で抱えると口を大きくひらくとかじろうとする。
そんなもの食べたら流石にお腹を壊すぞ……。
2匹とも何がそんなに気に入ったのか、キャロルも使用済みのコアをもっていなくなった。
「まあ……後で回収すればいいか」
2つ持っていかれたとしても別に良いだろう。
「よし【増幅】を【クリーン】に使用する」
僕が考えたのは使用済みのコアの再利用だった。
「そして【リペア】を使用済みのコアに向かって使う」
一度効力を失ったコアは2度と復活しないというのがこの世界の常識だ。
だが、僕はこれまで自分の恩恵で何度も常識を打ち破ってきた。
この中には元はダンジョンランクⅥのコアだってあると聞いた。もし、これが再生できるのなら格安で恩恵を取り放題ということになる。
はたして僕の賭けは…………。
「さ、再生しない……?」
微弱ながらもコアからの反応は返ってくる。だが、コアはうんともすんとも言わず、僕の【リペア】はどうやら空回りをしているようだった。
それからしばらく試行錯誤していた僕だったが、そろそろ【増幅】の効果も切れるので自らの失敗を認め反省しようかと考えていると……。
「キャルン」
「クエクエー」
カイザーとキャロルの2匹が戻ってきた。
「お前達勝手に持ち出すなよな……」
そういって非難の目を向けて見せるのだが…………。
「クエックエッ!」
「キャルッ! キャルッ!」
2匹はそれぞれ足元にコアを置く。
「それ……どうなってる?」
それを見て僕は信じられない表情を作った。
何故ならそのコアは…………。
カイザーのコアは青く、キャロルのコアは白く輝いていたからだ。
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