第261話 サクラの奮闘②
「本日もモンスターの百体抜きを完了しましたので、そろそろお相手していただきたいのですが?」
マリナお姉ちゃんがいるのは訓練施設です。
このゴッド・ワールド内ではパパとママとサクラであればモンスターを再現することができます。
マリナお姉ちゃんは今日もパパに課せられた百体抜きの訓練をしていました。
「アルカナダンジョン攻略以降殻を破ったみたいで、この程度では物足りなくなりました。今ならエリクとも少しは打ち合えるのではないかと思うのですが?」
マリナお姉ちゃんの前には百体のモンスターが積み上がっています。
お姉ちゃんは少し息を切らして汗を流していますが、まだまだ元気な様子。
まずいです、マリナお姉ちゃんに叩かれたらドッペルゲンガーは一撃で消滅してしまいます。
もしマリナお姉ちゃんにばれたらルナお姉ちゃんに告げられてそこから全員に知られてしまいます。このままではパパとの約束を果たすことができません。
「どうしたの、エリク? 私が相手では不満ということですか?」
モニターではドッペルゲンガーがあたふたしているのが見えます。サクラが指示を出せないのが行けないのですが、喋らないので不自然になっています。
『い、いや……。強くなったマリナにちょっと見惚れていたんだよ』
サクラが指示を出さなかったせいか、ドッペルゲンガーが勝手にしゃべりました。
何というかパパらしくない……ジゴロというのでしょうか?
キラキラとした薄っぺらい笑顔を張り付けてマリナお姉ちゃんに微笑んで見せています。
「うん? なにかちょっと変ね……?」
マリナお姉ちゃんが目を細めて近づいてきます。どうやらパパの言動をみて怪しみ始めたみたいです。このままではまずいです……。
(抱きしめて誤魔かして!)
「きゃっ! ちょっと。エ、エリク!?」
突然の行動にマリナお姉ちゃんが慌て始めます。
人は予測できない行動に出られると、これまで考えていたことが頭から吹き飛ぶとママから教わりました。
ひとまず、これで大丈夫。
「えとえと……次は……そうだ!」
『せっかくの誘いなんだけど申し訳ない、愛しのサクラが僕を呼んでいる。これにて失礼させてもらうよ』
ボロが出る前に離脱です。次の瞬間、転移魔法でドッペルゲンガーを回収しました。
「ふぅ、危なかったぁ……」
パパがサクラを大切にしてくれているのはマリナお姉ちゃんも知っています。これなら不自然にならないはずです。
「えへへへ、良かったぁ」
サクラは改めてモニターを確認すると……。
「な、何なのよ今の。も、もしかしてエリクって私のことが……? ど、どうすれば……ルナになんて言えばいいのかしら?」
思っていたよりも動揺しているみたいです。
ママが「マリナさんは一見するとマスターと適切な距離を取っていますけど、マスターが鈍感だからであって、ああいう人こそ意識し始めると早いと思うんですよね」と言っていました。
「と、とにかく今度あったらどういうつもりか問い詰めなければなりませんね」
すっかりメスの顔(?)をしているマリナお姉ちゃん。もしかするとサクラは押してはいけない扉を開いてしまったかもしれません。でもまあ、パパの指示は守れたのでヨシとします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます