第260話 サクラの奮闘①
★
パパとアンジェリカお姉ちゃんが旅行に向かっている間、サクラはパパから頼まれた隠蔽工作を行っていた。
「みんな、よろしくねー」
『『『『『『はいっ! おまかせください!』』』』』』
サクラの目の前には六体のドッペルゲンガーが並んでいる。
いずれも外見だけならばパパと瓜二つなんだけど、サクラの実力では姿を似せるのが精一杯で戦闘能力と記憶に関しては色々と抜け落ちてしまっている。
「足りない分はサクラが補うとして、パパが戻ってくるまでママも含めて全員を注意しなきゃ!」
生まれて初めてパパに頼られたのだ。完璧にこなせばパパから褒めてもらえるに違いない。
その時を想像するだけで私は天にも昇るほど幸せになり、
「えへへへへへへへ」
笑いがこみあげてきた。
「それじゃあ、ターゲットはママも含めた六人だからね。指示はサクラが出すからはりきっていこー」
『『『『『『おおおおーーーー』』』』』』
ここにサクラの戦いがはじまるのだった。
「そろそろパパとアンジェリカお姉ちゃんは着いたころかな?」
パパが不在になってから数日。今のところ放ったドッペルゲンガーは上手く対応しているようで、誰にもバレていないようだ。
サクラはゴッド・ワールド内に作った部屋でモニターを観察していた。
「にししししし、みんなパパだと思って接しているみたいだね。これならばれっこないよ」
各モニターではママとミーニャお姉ちゃんにルナお姉ちゃん、マリナお姉ちゃん、タックと他にフリーで一体が外をうろついている。
ときおり話し掛けられているようだけど、当たり障りのない会話だったりするので問題はなさそうだ。
そんなことを考えていると、ドッペルゲンガーの一体から緊急コールが流れてきた。
「エリクさん、何かして欲しいことありませんか?」
部屋で寛いでいるかと思ったのだが、退屈そうにしているミーニャお姉ちゃんが話し掛けてきた。
「まずいです、何かお願いしないとパパじゃないと疑われるかもしれません」
サクラは知っています。ミーニャお姉ちゃんがパパのお世話をするのが大好きでママとしょっちゅう揉めていることを。
もしここで完璧な返答をしなければ疑われてしまい、パパの不在がバレるに違いありません。
「えっと……えとえと……」
焦るほどになんと答えればわからなく、頭が真っ白になります。
サクラはパパの記憶を元にした異世界の映像を思い出し……。
「そうだ!?」
『なら、膝枕でもしてもらおうかな?』
「ひ、膝枕ですかっ?」
ミーニャお姉ちゃんの慌てる姿が映ります。
『ああ、ちょっと本を読んでいて眠くなってね。ミーニャの膝でなら良く眠れそうなんだけど。駄目かな?』
「だだだだ、駄目じゃないです! …………ど、どうぞっ!」
ミーニャお姉ちゃんは自分の膝を払うと顔を真っ赤にして促します。
『フフフ、失礼するよ』
ドッペルゲンガーに指示をだし、ミーニャお姉ちゃんに膝枕をしてもらいます。
パパがいた異世界ではこういうのが流行っているようです。
「エリクさん。ど、どうですか?」
『うん、とても良い寝心地だ』
「よ、よかったです!」
幸せそうな顔をするミーニャお姉ちゃんが映っています。それならもっとサービスして喜ばせてあげちゃえ。
『ミーニャ、これからは寝るときは君の膝を開けておいてもらえないだろうか?』
「へっ? それって……もしかしてプロ……」
『おっと、僕が欲しいのはイエスという返事だけだよ』
サクラが分析した結果、ミーニャお姉ちゃんは押しが強い人が好きみたいなのです。だからちょっとオラついて見せたところ……。
「もちろんです! 不束者ですが、宜しくお願いします」
「ふぅ、これでよし!」
ひとまず上手く誤魔化せたようです。
サクラは汗を拭うとオレンジジュースを飲みます。
「これでミーニャお姉ちゃんはパパを疑うことはなくなったし、のんびりと――」
おやつを食べてゆっくりしようとしていると、次はマリナお姉ちゃんのところにいるドッペルゲンガーからヘルプが届きました……。
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