第52話解体完了
先程の人だかりは、今朝方僕が壊滅させた盗賊団が捕まったという告知だったようだ。
どうやら僕らが捕まえた盗賊達から情報を得たらしく、討伐隊が組まれたらしい。
「でもね。妙なことがおきたみたいなんだよ」
イザベラさんは指を立てると眉間に皺をよせて悩ましい顔をする。
「妙なこと?」
「うん、討伐隊が盗賊団のアジトに突入したらしいんだけど、盗賊達は既に全滅させられていたらしいんだよね」
「へぇーそれは不思議ですね」
「それで、誰がやったかが問題になってて、掲示板で目撃情報を募ってるみたいなんだよね」
「そうなんですね。それは見つかるといいですね」
イザベラさんの世間話に受け答えしてると……。
『マスター白白しいですね。昨日は盗賊団をあんな方法で倒したくせに』
イブがちょっかいを掛けてきた。ちょっと幻惑魔法でトラウマを植え付けたり、属性魔法で倒しただけだろうに。
「それはそうと、解体した様子を見せてもらえませんかね?」
「あっ、うん。奥へ案内するね」
僕が仕事の話をするとイザベラさんが前を進んでいく。
無事に盗賊達が捕まったのならこれ以上喜ばしいことはない。
これで街の人達も安心して暮らせるし、僕はコアやら資金を手に入れられた。
問題は、ランクⅡとかのコアかな。売りさばこうにもこの状況で持ち込めば怪しまれるに決まっている。
ほどぼりが冷めるまでしばらく待つべきだろう……。
「これが、私が解体したモンスターだよ」
イザベラさんが指し示した先には解体されたモンスターの肉と毛皮、牙や爪などが並べられていた。
そしてそれとは別に魔核が並べられていて、こちらは販売する物ではないので早々に回収させてもらう。
「私はまだ見積できないから親方にお願いしたけど、販売価格を計算するとエリク君の受け取りが金貨16枚で私の方が4枚になるよ」
それは最初に約束していた通りの分配だった。
「この内容で問題なければ取引成立なんだけど……どう?」
見積もったのは親方さんらしいので大きく間違っていないだろう。
「ええ、それで結構です。宜しくお願いします」
そう言うとイザベラさんはお金を持ってきた。そして僕に渡すと…………。
「えへへへ、エリク君ありがとうね」
「依頼したのはこちらなのでお礼はおかしいのでは?」
「そんなことないよ。こんな大きな仕事を任せてもらえて随分と解体に慣れてきたからね。おかげで今後、もう少し大きな仕事も親方に回してもらえることになったんだよ」
僕が頼んだことでDランクモンスターを無理なく解体したという実績を作れたイザベラさんは喜んでいた。
「ならお互いに得をしたってことですね。僕はこの先もイザベラさんに担当してもらうことで安定した収入を得られて、イザベラさんも解体が上達する」
僕はそういって笑みを浮かべると、何故か顔を赤くして目を左右に動かし始めた。
そして耳元で髪を弄っていたかと思えば……。
「そっ、そうだ。鍛冶屋にいかなきゃいけないんだった。解体用の道具を修理しなきゃ……」
そう言って目を向けた先には壁に立てかけられている解体用の刃物が並んでいた。
「あれを修理に出すんですか?」
見たところ、刃こぼれをしているように見える。
「うん。今回のモンスターは結構硬かったからね。刃物の摩耗とか欠けがでちゃったから修理しないといけないんだ」
あれだけの刃物を修理していたら今手に入れた収入なんぞ無くなってしまうだろう。
「もし良ければその刃物、いったん預からせてもらえませんか?」
「へっ? …………なんで?」
唐突な申しでにイザベラさんは顔を丸くする。
そんな彼女に僕はあることを提案した。
「僕。良い修理業者を知ってるので持っていこうかなと思って」
この後鍛冶スキルを試すつもりだったので、ついでに修理もすれば丁度良い。
「えっ! そんなの悪いよ……?」
遠慮気味なイザベラさん。ここは是非僕にやらせてほしかったので強く押すことにする。
「そんなこと無いですって、その業者も今仕事が無くて暇みたいなんで、こういうのでもやらせてもらえれば助かるんですよ。格安で引き受けますけど駄目ですかね?」
そう頼み込むとイザベラさんは少し考えこんだ末に……。
「うん、エリク君がそこまで言うならお願いしようかな。私の相棒を宜しく頼むよ」
「わかりました! 任せておいてください!」
その言葉に僕は胸を叩いて応じるのだった。
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