第64話クラスメイト
「あっ、こんなところにいましたわ」
何かと思えばブルーのラメを散りばめたドレスを着たアンジェリカが僕を探し回っていた。
「歩くたびに声を掛けられてしまって、疲れましたわ」
人気者なのだろう、僕がいくら歩いても声を掛けてくるのは怖いおじさんだけだったのに……。
ドレスを着飾った可愛い女の子たちもいたのだが、何故かこちらと目が合うと頬を赤くして顔を逸らされてしまう。そしてそのまま歩いていると口元を隠してヒソヒソ話しているのだ。恐らくだが僕の恰好が似合ってないから笑っているのだろう。
「そう言えばアンジェリカ。着替えたんだね? そのドレスも良く似合ってるよ」
僕が社交場での礼儀に乗っ取って褒めると……。
「ありがとうございます。エリク様もとても格好良いですわ」
「うん。ありがとうね」
表情1つ変えなかった。恐らくはここに来るまで散々褒められたんだろう。そんな彼女の耳に赤みが差しているのはこのパーティールームが暖かいからに違いない。
「それで、僕を探していたみたいだけど?」
「そうですわ、せっかくクラスメイト達が集まっているというのにエリク様がいらっしゃらなかったので探しにきたのですわ」
「クラスメイト?」
「ええ、あの試験で一緒に合格した生徒達。彼らが3年間同じクラスで勉強するのです」
「そうなんだ、でもクラスといっても1クラスだけしかないんだよね?」
無人島で合格した人数はそれほどでもない。クラスという枠組みは必要なさそうだが……。
「ほかにも何クラスかありますから」
「ということは他にも合格者がいる?」
アカデミーの規模にしては随分と合格者数が少ないので変だと思っていたのだが……。
「受験者数が多いので試験会場は分かれていたのです。ほかにも他国の有力貴族などもアカデミーに留学してきていますから」
アンジェリカの言葉に納得すると。
「皆さんエリク様と話したがっていますので行きましょう」
彼女は手を取ると僕を連れていく。
その日は結局パーティー終了までクラスメイト達と楽しく過ごした後、寮まで引き上げていくのだった。
「えー。本日の授業を終了する」
授業終了の鐘がなり、教師が教科書を閉じる。
入学してから数日が経過した。
アカデミーでの授業は前世での知識が通用するところが多く、今のところは問題なくついていけている。
クラスメイトのほとんどはロベルトが仕切っていたグループの人間なので打ち解けているので居心地がよかった。
『イブとしては退屈なんですけどね……』
このところ、勉強メインでダンジョン探索や街に出ていない。なのでイブとカイザーはルーム内で暇を持て余していたようだ。
(仕方ないさ。週末にならなければ敷地から出られないんだから)
アカデミーは5日授業をした後2日の休日がある。
新入生の僕らは週末にならないと外出が認められておらず、基本的に寮で生活することになっているのだ。
もちろん敷地内にも店は存在するので必要な物は揃うが、訓練施設や生産施設が充実している反面、娯楽施設は少ない。
そんなわけでようやく週末になったわけだが……。
「ねえ、エリク君。週末はどうするの?」
「エリク。週末良かったら街で遊ばないか?」
クラスメイト達も初めての週末で嬉しいのか僕にまで声を掛けてくる。
どうやら仲の良いメンバーで街に繰り出して遊ぶつもりのようだ……。
「ごめん、週末は少しやらなければならないことがあるんだ」
それは現時点で何よりも優先しようと考えていたことだった。その為にわざわざ事前に約束まで取り付けていたのだ…………。
「えっ? エリク来れないの?」
「エリク様……用事ですか?」
同じく誘いに来たであろうロベルトとアンジェリカがショックを受けたような顔をしている。
僕は2人に向き合うと……。
「ほんとごめん。埋め合わせは今度するからさ」
手を合わせて謝るのだった。
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