第294話 異変の発生

「ゲートが開かないってどういうことだ?」


 僕は真剣な表情をするとイブに問いかけた。

 ルナとノエルも状況を察したのか険しい表情を浮かべる。


「おそらくは、何者かの妨害があるのではないかと……」


 イブは眉根をひそめると言い辛そうに口を開いた。


「妨害って……」


 これまで、ゴッド・ワールドへのゲートが出なくなった状況は二度しかない。


 一度目は、イブがアルカナコアを解析するために眠りに落ちた一年間。

 二度目は、アルカナダンジョン(悪魔)に挑んだ時。


 つまり、イブが閉鎖したかあるいは……。


「エリク、気配が……なんか……変?」


 ルナは顔を上げると森全体を見渡す。

 何やらただならぬ気配が漂っているかと思うと……。


「魔物に囲まれている?」


 こちらが気付く余地もなく周囲からモンスターが現れた。


「ありえないです!? イブの索敵を抜けてくるなんて!?」


「そうはいっても、実際に囲まれてますよ!」


 ノエルの言う通り、今は現実を受け止めるしかない。


「もしかすると……」


 短剣を構えて警戒しながらノエルはポツリと漏らす。


「ノエル、些細な事でもいい。気付いたことがあれば言ってくれ!」


「先程までおかしいと思っていたんです。道中見覚えのない木がやたらと多いなと」


 案内の途中しきりに彼女は首を傾げていた。


「だけど、ここにきてはっきりしました」


 彼女は続けて言った。


「ここは既に【神の試練】の場所なのだと」


 ノエルの言葉に、僕たち三人は口を開ける。


「ちょっと待ってください、ノエルさん。イブたちをアルカナダンジョンまで案内してくれるという話でしたよね?」


「うん、まだまだ時間が掛かるとさっき言っていたはず……」


 イブとルナがノエルに疑問を投げかけた。


「そうです、本来であれば精霊に道を確認しながら進んでいたのですが、途中から妙に精霊の姿が少なくなったのです」


 彼女はそう前置きをすると言葉を続けた。


「我々ハイエルフは精霊を使役することで森を自由に移動することができます。突如精霊がいなくなり、見たことのない木々が発生した。私には森が動いているようにしか思えないのですよ」


「つまり、僕らが移動すると同時に森が移動して神の試練が目の前にきたと?」


「ありえないです!」


「馬鹿馬鹿しい……」


 イブとルナの言葉にノエルは俯く。


「いや、それは大いに考えられるよ」


「マスター!」


「エリク?」


 驚く二人に説明をする。


「過去の転移者たちがこのアルカナダンジョンに挑んで戻ってきたのは、多分入り口が見つけられなかったからだ」


 エルフの案内なくしては道がわからないというのも大きかったに違いない。


「だけど、僕らは違う。ノエルのお蔭で無事に最深部に到達したんだよ」


「何でそうはっきり言えるの?」


 ルナの質問に僕は即答する。


「ゴッド・ワールドへの入り口が開かないから」


 眉根をピクリと動かすルナ。


「これまで、ゴッド・ワールドへの入り口が封鎖されたのは、イブの意思とアルカナダンジョン(悪魔)による妨害があった時」


 いずれも、アルカナコアの意思が関わっているのだと思われる。


「ここがアルカナダンジョンの制御下にあるとしたら、入り口が開かないのは説明がつくだろ?」


「ということは、マスター!」


 イブの言葉に僕は頷く。


「ここがすでに、アルカナダンジョン内ということだ」


 ルナとイブ、それにノエルの緊張が伝わってくる。

 僕らは準備を整える前に不意打ちでアルカナダンジョンにとらわれてしまったことになるからだ。


「でも、どうして過去の転移者はアルカナダンジョンに入れなかったのでしょうか?」


 イブの質問には推測だが答えが出ている。


「多分、ここのアルカナコアは意思を持っていて、ある程度自由に移動することができるんじゃないか?」


「だとするとその目的は?」


 ルナに向き直ると推測を告げる。


「ここのアルカナコアは僕らの持つアルカナコアに反応して近付いてきたんだ」


 次の瞬間、イブは自分の胸を両手で抱くと周囲を警戒するのだった……。


※宣伝


御無沙汰しております。まるせいです。

時間が空いてしまって申し訳ありません。

商業作業が多く、なかなかWeb更新まで手が回らない状況になっております。


早速ではありますが二つ宣伝をさせてください。


一つ目は、


新作

「女神から依頼を受け、俺が『異世界』を征服することになった件~チートマシマシで異世界勢力図を塗り替えていきます~」

https://kakuyomu.jp/works/16818093077029600284

の投稿を始めました。

こちらは原稿の合間に気分転換で書いている作品になります。他のWeb投稿作品と同じような読み味になりますので、良かったら読んでみてください。


二つ目は、こちらがメインになるのですが、


「Fランク冒険者の成り上がり~俺だけができる《ステータス操作》で最強へと至る~」

 こちらの作品のコミカライズ単行本2巻が5月15日(本日)発売となりました。

 Web版とも書籍版とも違ったコミカライズ独自の物語となりますが、面白さは保証します。

 まだ読んだことがない場合、是非一度手に取って読んでみてもらえると嬉しいです。

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ダンジョンだらけの異世界に転生したけど僕の恩恵が最難関ダンジョンだった件 まるせい(ベルナノレフ) @bellnanorefu

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