第112話D級ライセンス取得
「さて、まずはこのライセンスカードの説明をさせていただきたいと思います」
目の前では30代程なのか、やり手な雰囲気を漂わせた男性が話をしている。
その正面には僕を含む12名が丸形テーブルの椅子にそれぞれ座り手元に配られたカードと説明の紙を見ている。
僕が視線を巡らせると中には知り合いが4人も見つかる。
赤髪に角を生やした魔族の男タック。
ウェーブ掛かった金髪に誰しもが振り返りそうな美貌を身に着けた王女のマリナさん。
ツインテールの銀髪に杖を横に置いて眠たそうな目でじーっとカードを見つめているルナさん。
ここまでがこの島に来る直前に知り合ったメンバーだ。
入島前にやりあった彼らとこうして一緒に説明を受けているのは不思議な気持ちになるのだが、実力を考えてみれば、なるほど。と頷いてしまいそうだ。
「エリクさん。ちゃんと説明は聞きましょうね」
「ええ、すいません」
僕は隣を見るとセレーヌさんに謝る。
最後の知り合いは意外と言ってしまうと悪いけどセレーヌさんだった。
彼女は生徒会の代表として参加していると言っていたのでそれ程単位にこだわりを持っていなかった。この島でダンジョン探索をできるようになるライセンスに執着していないので程々で履修を終えると思っていたのだが、実際はこうして単位を取得してみせた。
実力から考えるとそれ程不自然ではないけど……。
これ以上怒られてしまうとばつが悪い。目の前の男性に意識を集中すると説明を聞くのだった。
『思ってるより面白い特典とカードなんですね』
同じく説明を聞いていたイブが感心した声を上げる。
なんでもこのライセンスカードだが、魔法による様々なセキュリティが組まれており登録した本人しか利用ができないらしい。
(確かにこれは買い物とかでも便利だよな)
このカードはお金をチャージするこもできるようで。ダンジョン探索の報酬をチャージしてもらい、現金を持ち歩くことなく島を利用することができる。
この島独自の技術らしいので島外では使えないが、この島での買い物は自由にできる上、D級ライセンス持ちは1割引き。更に、公共施設の優先使用権などもあり特典が素晴らしい。
「えー、このカードはダンジョン探索の際にも必要になります。各ダンジョンの入り口には台座があり、カードを置く場所があります。そこにカードを置くことで認証登録を済ませ、入場することができる仕組みになっているのです」
なんでもこのアスタナ島特有の仕様らしく、この島のダンジョンは全てこのような仕組みになっているそうだ。
あとから開発をしてこのようなシステムにしたのではなく、元々の仕様を島の運営者達が利用しているらしい。
誰がダンジョン探索に入ったか、戻ってきていないのかがはっきり分るので救助行動や生死判別も簡単にできる優れたシステムだ。
「ってことはよ。俺達は今日からダンジョンに潜って構わねえんだよな?」
「そうですね。ライセンスの持ち主はそれを受け取った時点でこの島のダンジョンを探索する権利を得ます。ダンジョンに入って得たダンジョンコアやレアドロップがあればお持ちください。買い取らせていただいた後、貢献ポイントを与えます」
「その貢献ポイントがある程度溜まるとライセンスが昇格するということですよね?」
マリナさんの質問に男性は頷く。そして周囲を見渡すと……。
「この島ではライセンスが上になればなるほど特典を受けることができるようになります。なので、ほとんどの探索者はダンジョンに潜り貢献ポイントを得ようと頑張っているのです」
「例えばどんな特典?」
ルナさんが挙手して静かな声で質問をする。
「例えばですがC級ライセンスになった場合、武器や防具の優先メンテナンス、ポーション等の優先購入権が得られます」
アスタナ島は広いが物資と人材が足りない。食糧や嗜好品、その他必要な物があれば他国と取引するしかなく、その取引は海をまたぐ必要がある。
武器や防具をメンテナンスする人員、ポーションなどの物資は在庫が薄くなる場合がある。
そうなった際に運営側が優先して物資を渡したいのはやはり高位の探索者ということらしく、その辺が優遇されているらしい。
「B級ライセンスではどうなのですか?」
隣のセレーヌさんも興味深いのか質問をする。
「B級ライセンスとなると雇用をすることができます。1人のライセンスで20人までをE級ライセンスとして登録し島で商売をすることを認めています。また、島内にある家の中から一軒選んで自宅にできる権利があります」
B級取得者ともなると運営側も手放したくないらしい。待遇が一気に上がるようだ。
僕には必要ないが、拠点となる場所があるのは装備を置いたりするうえでもメンバーを集合させるうえでも必要になる。
なによりもこの島での商売権を認めるということは、自分達で探索したダンジョンの収集品を独自で売ることができるということ。貢献ポイントもBより上を目指さなければ必要なく、島の外部から生産系職人を招いて雇えば堅実に稼ぐこともできるだろう。
そんなことを考えていると説明も終盤になってきたらしい。
「これでライセンスの説明を終わります。最後にですが、ここにいらっしゃる12名の方々には3日後に行われる【星降りの夜】に参加する権利が与えられています」
「星降りの夜……?」
初めて聞く単語に僕は首を傾げるのだった。
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