第8話探索者ギルド
ダンジョンから出ると外は明るかった。
ダンジョン内は太陽が見えないので時間感覚が狂っていたが、どうやら朝らしい。
「どうりで眠いわけだ」
モンスターをやり過ごす為に何度かルームを出入りしたが、最初の休憩以降はダンジョンを進み続けた。そのせいで夜通し動き続けていたらしい。
「取り敢えず、街に戻って……」
ここは街から近場のダンジョンなので徒歩で1時間もかからない。
「皆心配してくれてるかな」
レックスやミランダの顔が浮かぶ。
あの二人の事だから僕の身を案じて眠っていないかもしれない。
「早く戻らなきゃな」
そんな様子が思い浮かんだ僕は口の端を緩ませると街へと急いで戻るのだった。
「お、落ち着いてください。現在、探索者ギルドに依頼を出している所です。高ランク探索者が戻り次第救助をしますから」
「そう言って何時間待たせるつもりだっ!」
街に戻って探索者ギルドを訪れた僕の耳に怒鳴り声が響いてきた。
「事前申請を見ると間もなく戻ってきますので」
片方は聞き覚えがないが、もう片方は毎日聞いている声だ。
「ええいっ! こうなったら俺が自分で助けに行くぞ」
「おじさんっ! 俺も連れてってくれ」
「わ、私もっ!」
声の主は僕の父。マリクだ。
そしてレックスとミランダがそれに追従する。
「お、落ち着いてくださいっ! 人員を揃えないで向かえば二次被害になりますから」
セレーヌさんが宥めようとしているのだが、逆効果だったようで。
「俺の大事な息子がダンジョンに置き去りになってるんだぞっ! 落ち着いていられるかっ!」
「エリクは俺の親友だっ! 絶対に救い出す!」
「私だって! エリクは大事な幼馴染だもんっ!」
三人の訴えに鼻の奥がツンとする。僕は目をゴシゴシ擦ると中へと入っていった。
「どうやって脱出したかもう一度教えて貰えますか?」
僕が促されるままにソファーに腰かけると左にレックス、右にミランダが座る。
側面のソファーでは父のマリクが両手を組みながらこちらを見ている。
「はい。わかりました」
あれから、無事に戻った僕が皆の前に顔を出すとその場はパタリと静まり返った。
まるで幽霊を見るかのような視線を皆が向けるなか、ミランダが泣きながら抱き着いてきて「エリクごめんね。よがったよぉ~」と頭を押し付けてきたので僕は慰める側に徹した。
それから暫くしてミランダも落ち着いたので離れてもらい、ダンジョンから脱出して戻ってきた事を説明したのだが「上の人間に報告してきます」とセレーヌさんが言った。
暫くしてセレーヌさんが戻ってくると「ギルドマスターがお会いします」と告げられここに案内されたのだ。
正面にはセレーヌさんの他に探索者ギルドマスターを名乗る壮年の男とサブマスターを名乗る女性がソファーに腰かけて質問をしている。
なので僕は三人に向けて先程と同じ説明を繰り返した。
「……というわけで、ルームの力でモンスターをやり過ごしてダンジョンを脱出したんです」
「…………なるほど。その恩恵にそのような使い道があったのですね」
説明を終えるとサブマスターが書類に何やら記載している。
「何にせよ無事で良かったです」
セレーヌさんが暖かい微笑みを投げかけてくるので笑顔で返す。
「そうすると、お前さんダンジョンコアを持ってるんだな?」
ギルドマスターが探るような目を向けてきたので。
「ええ。ありますよ」
「疑うわけじゃねえが、見せて貰えるか?」
話の裏付けにしたいのだろう。
「分かりました。お待ちください」
僕がルームを開いてそれを取り出そうとすると……。
「えっ?」
「なになにどうしたの?」
「うおっ! なんだこれ?」
両側からレックスとミランダが覗き込む。
「これ、話に聞いてたより全然広いんじゃ?」
僕らの前に広がっているのはルームと呼ぶのは無理がある…………豪邸でも建てられそうな広い空間だった。
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