第46話土のダンジョンランクⅣ②
「よし、今日はここで休息とする」
今日一日ダンジョンを歩き回った末にトーマスさんはそう言った。
それというのも、丁度良さそうな部屋があったからだ。
ダンジョンには時折こうした空間ができる事がある。
モンスターが出ないわけではないのだが、入り口を警戒すれば不意打ちは防げる。
何より土属性のダンジョンは基本地面がゴツゴツしているのだが、こういった部屋は地面のおうとつがないので横になって休息を取るのには最適だ。
今日一日で4つ程階段を下りた。
その度にモンスターが強くなってきたのだが、このパーティーは安定した強さを発揮してそれらを撃破してみせた。
そんなわけで本日の移動はここまで。ここに泊まるということで、食料を取り出してそれぞれが一息つき始めるのだが……。
「予定よりも進んだわね」
「ああ、意外だよな」
そんな会話を始める男女の戦士さん達。何気なく思うのだが仲が良さそうな気がする。
そんなラブなコメの波動を感じ取っていた僕だが……。
「エリク君。疲労はどんな具合だ?」
周囲の見回り終えてトーマスさんが戻ってきた。
「僕は戦闘に参加しないで付いてきてるだけなので。問題ないですね」
モンスターがドロップしたアイテムを拾いまくったけど、それは触った瞬間にザ・ワールドへと収納してある。
あまりの早さにトーマスさん達も驚いていたが、ワールドを開いて収納している様子を見せたら納得してくれた。
「そうか……。わりと初心者にはきつい速度だったんだけどな……ドロップの収拾も早かったしこのペースなら明日にはボス部屋までたどり着けそうだ」
そういって地図を見直す。地図にここの休憩所のことも書かれてるのでどうやら想定していたらしい。
言われてみれば結構なハイペースで歩いていた気がする。前衛の3人と弓使いの男の人は平気なようだけど、魔法使いの女の人と僕を護衛してくれている治癒士の女の人はしょっちゅう息を切らせていた気がする。
僕は、ここで休息となったので皆に提案をしてみる。
「そうだ、皆さんに使いたい魔法があるんですけど」
その言葉に男女の戦士に弓使いの男の人。トーマスさんに、話をしていた魔法使いと治癒士の女の人達が見てくる。
「魔法? 恩恵はアイテムボックスじゃないのか?」
トーマスさんの言葉に僕は頷いて見せる。
「実はスキルで【クリーン】という魔法が使えるんです。これは身の回りの汚れを綺麗にしてくれる効果があって、僕は一日の終わりにこれを掛けないと落ち着かないんですよ。それで、僕だけがサッパリするのも申し訳ないのでどうかなと思ったんですけど……」
実に自然な流れで切り出せた。ロベルト達の時は散々悩んだんだが、僕の我儘ということにすれば受け入れられやすいかも。
実際、ダンジョンで戦闘を繰り広げた彼らは相当に汚れているし……。
「まずは僕が自分で使って見せます……【クリーン】」
次の瞬間湯気が立ち上がり、気持ちよさとともに汚れが落ちていく。
「ほぅ。凄いな……。これを俺達にもかけてくれるのか?」
僕は早速トーマスさんにクリーンをかけると……。
「これは……癖になるというか、今日の疲れが吹き飛んだぞ」
鎧も綺麗になり、精悍な顔つきが戻った。
「皆も掛けてもらうように」
その声をきっかけに全員に魔法を掛けて行くのだが……。
「ありがとうね。エリク君」
治癒士と魔法使いの女の人がお礼を言ってくれた。
この人達は戦闘のたびに僕の傍で警戒をしてくれていた。なので……。
「2人の綺麗な姿が見られた方が僕が嬉しいので」
そう笑顔で返しておく。
実際、クリーンをした後の2人からは良い匂いが漂ってくる。綺麗な顔をしているし汚れている姿よりは全然いい。
「やだ、可愛い! 団長この子持って帰りたいです」
「あっ、ずるいです」
何故か両側から抱き着かれた。
「こらおまえら。純情な少年をからかうんじゃない」
戸惑っていたのが顔に出たのか、トーマスさんが止めに入ってくれる。
「でも、確かにこの恩恵とスキルはメンバーに欲しいんだよな……」
だが、トーマスさんは何故か真剣な顔をして僕を見つめてくるのだった。
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