第168話リゾートダンジョン計画完了
「本日はお疲れさまでした。数日後には島外から大量のお客様が来るので頑張っていきましょうね」
スタッフを集めるとイブが挨拶をしている。
その笑顔はとても美しく、皆はまるで魔法でも掛けられたかのように疲れが吹き飛びイブに見惚れていた。
「そうだ、スタッフの皆さんも各施設を使う事を許可します。クリーンの魔法を使って身綺麗にするのもよし。温泉施設で身体を回復させるも良し。他のお客様に配慮しながら利用してくださいね」
「「「「「「おおおおおおおお」」」」」」
イブの言葉にスタッフが喜んだ。
「ルナ。温泉で身体を休めましょう」
「うん。ゆっくりしたい」
「セレーヌ。飯に行こうぜ」
「タックさん。あまり肉ばかり食べないで野菜も摂ってくださいよ?」
「ロベルト、私はマッサージに行きますわ」
「はっ、では俺は後程迎えにあがります。アンジェリカ様」
エリク達に酷使された王族達もそれぞれゆっくり休むつもりらしい。
そんな彼らを見送ると……。
「それじゃあ、せーんぱい。2人になれる場所に行きましょうか」
イブは甘える様子でエリクの肩を押すのだった。
「とりあえずは成功ってことでいいかな?」
ゴッド・ワールドへと引っ込むとエリクは椅子に腰を下ろして手を組んだ。
「そうですね、議員の人達も満足されましたし。小さなトラブルはありましたが、それも想定内でスタッフが対処してましたし」
イブはホテル内であったことについてエリクに報告していく。
その報告は多岐にわたり、全フロアの細かい部分まで網羅していた。
「それで、どれだけSP溜まった?」
エリクはイブの報告を途中で切ると質問をする。
「えっとですね……凄いですよ。1日で10800SPも集まってます!」
「思ったより集まったね。やはり探索者がいるのは大きいな」
驚くイブに対しエリクはあごに手を当てると冷静に言った。
「それにしても、最初聞いた時はとんでもないアイデアだと思いましたけど、こうしてSPに変換されるのを見ると納得です」
イブはそう言うと尊敬の眼差しでエリクを見る。
「建物の入り口をゴッド・ワールド内のダンジョンと繋いでそこにお客さんを引き込む。そしてダンジョン内を高級ホテルと見間違うように内装を施す。誰一人ここがダンジョン内だって気付かなかったね」
それこそがエリクが考え付いた計画だった。
彼は色々実験をしつつSPを大量に得る方法について考えていたのだ。
「丁度、議長さんから島おこしの話を持ち掛けられてよかった。こうして高級ホテルを運営することでお金も集められるし、SPも集められる」
ゴッド・ワールドで収穫した野菜は経費ゼロで賄えるし、ホテルの建築費や魔導具などの維持費もSPで補える。つまり、最初に仕入れた家具と人件費を除くとお金は一切掛かっていないのだ。
「とりあえず足りなくなっていたポーションの注文は済ませておいたよ」
「皆さん凄い勢いでスロットを回してましたよね。まあ、ポーションや野菜であっても彼等に損はないみたいですから当然ですね」
流石にエリクが作ったポーションを景品にするわけにはいかないので、こればかりは市販のポーションを仕入れている。コインの値段を考えるとポーションの仕入れ値とイコールなのだが、野菜が当たることもあるので半分は利益が残る計算だ。
「探索者を半額にしたの大きいですね。SPを大量に獲得できる彼らにこそ滞在して欲しいですから」
「彼らに僕の自作ポーションをダンジョンで配ることで市場に卸してもらい、そのお金をカジノで散財してもらう。そうすることで僕は身バレをすることなく資金を溜められる」
「カジノで散財し過ぎた探索者には少し良いレアアイテムや装備なんかをドロップさせれば破産もないですからね。島の外部から呼び寄せた貴族の人達なら大金でそれらを買ってくれるだろうし、島全体が活性化するのは間違いないです」
イブの言う通りだ。今回の件が噂となって広がれば多くの人間が島を訪れることになるだろう。
探索者達はライセンスを取得してダンジョンに一獲千金を求めて。
観光客はホテルのサービスや商品を求めて。
いずれにせよアスタナ島に大きな利益をもたらすはずだ。
「わっ、凄いです!」
「ん。どうした?」
「ここの維持に使っているダンジョンコアなんですけど、今日一日でランクⅡからランクⅣまで成長しましたよ」
「それは良い報告だな。盗られないようにきっちりガードしておいてくれ」
あくまでダンジョンなのでダンジョンコアが存在しなければならない。
滞在している人間はホテルと疑っていないので問題ないのだが、盗られてしまうとせっかく育てたコアからスキルや恩恵を得る事が出来ない。
「安心してください。何重にも壁で覆っている上トラップも仕掛けてありますからね。強行突破するのは不可能ですよ」
どうやら守備は万全のようだ。
「そういえば、イブの本体っていまどうなってるの?」
ゴッド・ワールドの中央にある台座にはイブの本体が嵌っていた台座がある。
だが、現在そこは空洞になっている。
「イブの本体はこのゴッド・ワールドの心臓部ですからね。万が一にでも盗られないように誰にも到達できないダンジョンを作って最奥に厳重保管してありますよ」
「誰にもって、僕だったらどうだ?」
イブの本体を盗られるとまずいことは理解している。だが、もしエリクが挑んだ場合はどうなのか?
「途中、超強力なトラップとモンスター。複雑な構造を盛り込んでありますからね。マスター並みの実力者でも単独突破は厳しいかと思います」
どうやら難攻不落のダンジョンらしい。
「イブがそう言うのなら安心かな。引き続き頼んだよ」
「はい。マスター以外の人間に触れられるのは嫌ですから。絶対守りますよ」
エリクの命令にイブは嬉しそうな顔を見せるとそう答えた。
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