第185話暗躍者
「エリク様。C-10西の森付近のモンスターの討伐が完了しました」
「わかりました、次のポイント指示があるまで休憩をとっていてください」
「エリク様。E-5の制圧が完了しました」
「ではそのまま兵士さん達を滞在させてください。今後その場所に交代で人員を送りそこを中継地点にしますので」
次から次へとくる報告に僕は地図をみると指示を下していく。
イブから上がってくる報告に基づいてモンスターの駒を置き、それを効率よく討伐するための人員を配置していく。
「……どうしてこうなった?」
アゴに手を当て、次にどこに人員を向かわせようか考えているとふと疑問が沸いた。
最初はガイルさんにモンスターの位置を知らせているだけだったのだ。
だが、気が付けば指揮権が与えら、ガイルさんは僕の補佐のように振舞い始めたのだ。
「お前たちっ! ここに来てから3日。エリクのお蔭で殆ど被害を出すことなくスタンピードを抑え込めている。過去のスタンピードと比較してもここまでスムーズな討伐はなかった! モンスターどもの脅威は日が経つ毎に減少していっている! エリクの指示をよく聞いてあと少し頑張ってくれ!」
「「「「「はいっ!!!」」」」」
これだ。本来なら僕もそろそろ討って出るつもりだったのだが、指揮官にされてしまったので討伐に向かうことが出来ない。
『あっ、マスター。今度はB-9に低ランクモンスターが10体程ですよ』
僕はモンスターの駒を配置すると動ける人員に声をかけて現場へと向かわせるのだった。
★
「くたばれコボルトめっ!」
レックスの剣が一閃するとコボルトの身体が上下にわかれた。
「それ以上近寄らないでっ! ファイア!」
ミランダが魔法を唱えるとこれまでの倍ぐらいの大きさの火球が出来上がり放たれる。
「よしっ! 命中したわ」
火球はゴブリンめがけて飛んでいくと数匹を巻き込んで燃え上がった。この威力なら確認するまでもなくゴブリンどもは死んでいるだろう。
「お、お前ら凄いな……」
パーティーメンバーの1人が驚いている。
「ああ、今回の討伐でレベルアップしたみたいだな」
「う、うん。私も何かコツを掴んじゃったみたいでさ。あはは……」
咄嗟に笑ってごまかすレックスとミランダだったが2人の胸中は……。
((話に聞いていたのと全然違うっ!!))
無理もない、エリクは自分が贈ったアイテムを使ったことがなかった。
鑑定により説明を読んでいるがそれがどのような意味を持つのかについては考察していなかった。
(魔力の消費を9割抑えるって、同じ消費魔力を込めたら魔法の威力がやばいじゃない!!)
星屑装備は魔法の消費を抑えるという説明になってはいるが、今までのファイアと同等の魔力を込められないわけではない。結果としてミランダの魔法は相当威力が上がっていた。
(この指輪もそうだけど、剣がおかしい。絶対これエリクが何かやっただろう!)
それとなく休憩で戻った時に問い詰めたが、エリクは愛想笑いを浮かべていたので間違いない。
「と、とにかくここらのモンスターは片付いたわけだし、一度本部に戻って指示を待つことにしよう」
一度戻ってエリクが作っている料理を食べて休憩すれば嘘のように回復する。
お蔭で兵士たちの士気が高く、たとえ防衛の穴をあけてもすぐに次の戦力が前線へと送られてくる。
レックスたちもそれを理解しているからこそ無茶をする必要が無かった。
★
『……おかしい。これだけモンスターを追い立てたなら多くの人間の恐怖を得られるはずなのだが……』
暗闇の中声がする。
『それどころか押し返されている? 人間など脆弱な存在のはずだが?』
もしかすると自分が封印されている間に人類が進化したのかもしれない。
『いずれにせよこのままというわけにもいくまい……』
人間達の恐怖の感情。それを得る必要がある。
『近くに人間どもの集落がいくつかある……』
声の主が見下ろすとぽつぽつと人間の街があった。
『これまでのやり方が通じないのなら……』
ふと愉快そうに笑って見せると……。
『攻め方を変えるのも一興か』
楽しそうに呟く。だが彼は知らなかった……。
この想定外の事態がたった1人の人間によって引き起こされているということに……。
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