第55話ロンダリング
「さて、次にやるべきはロンダリングかな?」
「ろんだりんぐ?」
イブは首を傾げる。
「イブ。盗賊達の武器や防具を全部持ってきてくれ」
「わかりましたマスター」
そう言うと、地面が動いて奥から武器と防具が出てくる。
それらは僕の前にピタリと止まった。
そこには盗賊達から回収した武器や防具山積みになっている。
「取り敢えず、金属と皮で分けよう」
そう言って次々に分けて行く。
盗賊達は結構な人数いたし、装備もたくさんあったのでこれだけで結構な作業だ。
「ふぅ。こんなところかな?」
しばらくすると2つにわけた山をみると。
「それで、次はどうするんですか?」
黙ってみていたイブが口を挟んできた。
「イブ。この金属、種類ごとでわけられるか?」
「見た事無い金属は無理ですけど、ここにあるのなら出来ますね」
「じゃあ、頼んだ!」
それから細かく分けて行く。そうすると全部で4つの塊になった。
「左から順番にメノス鉄とマイア鋼とロマリー鋼鉄とミスリルですよ」
イブの補足説明に僕は頷く。メノス鉄にマイア鋼。これらの金属は鉱石を採掘しやすいのでわりと簡単に手に入るのだ。
ロマリー鋼鉄とミスリルは希少金属に分類されるのだが、恐らくは盗賊の幹部クラス以上が持っていた武器や防具なのだろう。
「よし、それじゃあこれを種類ごとに溶かしてインゴットにしてくれ」
「わかりましたマスター。ここだと熱くなってマスターが快適に過ごせなくなるので離れた場所でやりますね」
イブはそう言うと金属をスススと移動させていく。相変わらずの気遣いが凄い。
「さて、次に金属以外のものだな」
宝石類は現状で思いつかないけど、こっそり売りさばけば問題は無いだろう。
防具に関しては魔道士用の装備だったり、杖だったりと扱いに困りそうだ。
「皮装備は一度解体すれば良いとして、杖もその内市場にこっそりと流すか」
形が変えられないのなら目立たずに売ればよい。即座にそう判断をすると……。
「それじゃあ、イザベラさんに解体用刃物を返しに行くとするか」
「こんにちはー」
もはや慣れたもので、僕は毛皮骨肉店を訪れた。
「あっ、エリク君。おはよう」
声を聞きつけたのか、イザベラさんが出てくると嬉しそうに笑った。
「昨日預かった解体用の刃物を持ってきました」
「ありがとう。それじゃあ奥にきてくれるかな」
そう言われて奥へと引っ込んでいく。
「それじゃあ、出しますね」
僕はそう言うと作業テーブルに刃物を並べて行く。
「うわぁー、まるで新品みたいだよ!」
イザベラさんは目を輝かせるとそんな感想を口にした。
「へぇ……随分とまあ、腕の良い鍛冶に依頼したんだな。ここまでピカピカに磨き上げてくるなんて」
その声を聞いていたのか、親方も現れる。そして他の人間も興味を惹かれたのか僕とイザベラさんを囲むように作業台に集まった。
「ここまで丁寧な修理? むしろ作り直したレベルじゃないか?」
「いずれにせよ尋常じゃねえ手間を掛けてるな」
「モンスターの血の汚れ1つねえとか、どうやったらそこまで綺麗にできるんだ?」
口々に刃物について意見をしていく。
「そうだイザベラさん」
「ん、何かな?」
「ちょっとした手違いがあって、刃物の切れ味が良くなりすぎてるようなんです。なので、今までと同じ感覚で使用すると怪我すると思うので、慎重に使ってくださいね」
「うん。わかったよ!」
そんな会話をしていると……。
「だったらこいつを試してみたらどうだ?」
その中の1人がそう言うと何人かを引き連れて離れて行った。
そして数人がかりであるモンスターの死体を運んでくる。
「こいつはランクCのドラゴンパピーだ。幼いとはいえドラゴンの皮膚はメノス鉄に匹敵すると言われてるからな。解体を試すには丁度いいだろ」
大きさはサイと同じぐらいだが、鱗が硬そうなモンスターだ。
「えっ、でも……」
悩む素振りを見せるイザベラさんを親方が後押しする。
「せっかくだし試してみろ」
「わかりました」
皆が見守る中、イザベラさんは刃物を持つ。
先日とうとうDランクモンスターの解体までやらせてもらえるようになったのだが、Cランクはモンスターの強さと希少性も高まる。
なんでも、このドラゴンパピーはどこぞの農場に現れて家畜を食らっていたために冒険者ギルドに依頼がきたらしい。
それでCランクの冒険者パーティーが引き受けて討伐したらしいのだが、皮膚が硬く剣が通らなかったので倒すのにかなり苦労したようだ。
そして高ランクのモンスターは死んだからといって皮膚がやわらかくなるという事は無い。
なので、解体する場合、討伐するのと同じぐらいの切れ味の刃物が必要になるのだが……。
「まず、そこの首の骨のつなぎ目を落とすんだ。そうすれば背骨をガイドにして解体して行ける。かなり力がいるから気をつけろよ」
「わかりました親方」
解体の仕方を教えてもらったイザベラさんは真剣な顔をする。
「い、いきますっ!」
ドラゴンパピーの首筋にむけて刃物を振る。次の瞬間…………。
「「「「「「「はっ?」」」」」」」
ギロチンでも落としたかのようにドラゴンパピーの首がストンと落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます