第26話いつの世も学校ぐらい出ておくべき
「クエエェークエェェー」
「よーしよし。ここが気持ちいいのか?」
ベッドに横になりながらカイザーのあごしたを指で撫でてやると気持ちよさそうな声をあげて甘えてくる。
本日の労働を終え、身体を綺麗にして教本を読み直していた僕のところにカイザーがとことこと歩いてきてベッドに飛び乗った。
そして、そのまま甘えるように身体をこすり付けてきたので撫でてやっている。
『いいな。私もカイザーに触りたいです』
「とは言ってもな……」
カイザーがイブの球体に触る事はできるけど、そういう事では無いだろうし……。
イブには申し訳ないが、この羽の柔らかさと暖かさはこうして抱いてみて初めて実感できる満足感なのだし。
『そういえばマスター。一つ聞いてもいいですか?』
「ん。なんだ?」
『私の見立てではマスターは既にランクⅣのダンジョンをソロで攻略できると思うんですけど』
カイザーの卵を食べたり、恩恵の力も上がってるからな。今なら4属性の魔法を使う事が出来るので、可能だろう。
『なのに、何故いまだに試験を受けてるんですか? 学生の身分なんて、今後ダンジョンに行く時間を確保するうえで邪魔じゃないですか?』
確かにそう思えなくもない。僕としてもいまさら他の学生と足並みをそろえるつもりは無いし、エリート志向の強い連中のようなので仲良く出来るかも微妙だ。
「確かにそうなんだけどさ、学校を卒業しないと困る事もある」
『それって、なんですか?』
そう。実力が足りているからと言って学校に行かない選択肢を取る事が出来ない理由。それは…………。
「ダンジョンランクⅣ以上に潜る資格を得るには学校を卒業する必要があるんだよ」
僕が言った事実にイブは黙り込み、腕の中のカイザーが欠伸をしてもたれ掛かってくるのだった。
「イブ。お願いがあるんだ」
翌日になり、僕は前日から考えていた案を実行する為にイブに話しかけた。
『そんなに畏まらなくても、私がマスターの頼みを断るわけ無いじゃないですか』
イブから漏れる嬉しい言葉に僕は早速指示を出す事にする。
「じゃあまず、このゴブリンたちが持っていた長剣を全部溶かすから釜を作ってくれ」
先日から討伐するたびに集めた剣を柄から切り離し、金属部分だけを放り込んでいく。そして…………。
『えっと、火力は私がコントロールすればいいですかね?』
「うん。僕でも魔法は撃てるけど、この空間内ならイブの方が適任だ」
イブは僕の許可があればコアから力を吸い出して魔法を使う事が出来る。
僕だと魔法を撃ってお終いだが、イブであればその場で最適な熱量を展開して維持する事も出来るだろう。
この空間内全てを把握できるイブならではの魔法の使い方だ。
『完全に溶けましたけど、どうするんですか?』
「次は、網状になった厚さ10センチぐらいの溝をこのへんに掘ってくれ。そしたら溶けた金属をそこに流し込む」
『はい。マスター』
釜を持ち上げて、できた溝に元は剣だった金属が流し込まれる。
「あとは、上にたまった余分な金属をハケでならしてくれ」
『はーい。マスター』
本来なら工房などが必要な工程なのだが、イブは僕の思考を読み取ってきっちりと仕上げてくれる。
「よし、仕上げは僕が魔法を使う【ミストウインド】」
そこに向けて霧状の風を送りこみ金属を急速に冷やしてやる。そして…………。
『これ、なんに使うんですか?』
最後にイブがその形状の物をにゅっと押し出して地面に置く。
そこにできたのは網状になっている金属の板だった。僕はそれを見て満足げに頷くとイブに向かって言ってみた。
「これからバーベキューをやろうと思う」
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