第22話パワー100%アップの効果
『マスター。右手500メートル先にモンスターが3匹います』
「はいよ」
イブの指示に従うと僕は音を殺しながら進んでいく。
そして言われたポイントの近くに来ると草木の間から様子を見る。
『コボルトが3匹ですね。一気に片付けましょう』
「そうだな」
相手はF級モンスター。駆け出しの戦士がサシで戦うぐらいの強さを持つている。
それが3匹となるとパーティー単位で戦う方が良い。だが……。
僕は短剣を構えると、
「行くぞっ!」
コボルトの不意をつくため飛び出した。
「ワフッ!?」
コボルト1匹が気付いて叫び声を上げると残りの2匹が一斉にこちらを見る。
だが、叫び声を上げた1匹は構えるのが遅れたのか、無防備な姿を晒した。
「くらえっ!」
力任せに短剣を横に振る。コボルトは皮鎧を纏っている。通常であれば短剣なんかの攻撃では浅く傷をつけるだけだろう。だが…………。
――ドシャ――
何か重たいものが地面に落ちる音がすると
「「ワワワッ!? ワフゥッー!?」」
2匹のコボルト半狂乱になり叫び声をあげている。
僕が地面を見てみるとそこには上半身と下半身がわかれたコボルトの死体が転がっていた。
「よしっ! 次だっ!」
僕が睨みを利かせると、残ったコボルトは怯えながらも向かってきた。
恐怖のせいか振りが不安定で予測しづらい。
だが、以前のゴブリン戦と比べると相手の動きがスローモーションのようにはっきりと見える。
振りかぶったコボルトの剣を身体を横に引いて避けるとそのまま足を横滑りさせて流す。そしてもう1匹のコボルトの横なぎを身体をくの字に曲げる事でかわす。
それらの動作を一瞬でおこなったあと、コボルト達は僕を見失ったのかキョロキョロしている。
僕は1匹目を脳天から切り降ろして両断すると、2匹目は首を狙って跳ね飛ばした。
『流石マスターです。鮮やかでした』
戦闘が終わり、イブの称賛が聞こえる。
もちろん嬉しくない事はないのだが…………。
「これが【神殿】の……いや、ザ・ワールドの効果か」
その力に驚く。
そもそも、こうして戦い始めた経緯を思い出す。
今朝、僕は目覚めると【神殿】の祝福が切れているのを感じた。
それで本日の祝福を得るために祈りを捧げてみたのだが、与えられた祝福が『パワー100%アップ』だったのだ。
どうせならばその日に受けた祝福の効果を試してみたい。
そう考えた僕は本日はフィールドを歩き回る事にした。
そうして何度か単体でいるゴブリンと戦ってみたのだが、以前苦戦した時とは比べ物にならない。
相手の攻撃は軽く、速度は亀のよう。
どうやったら苦戦できるのか理解できないレベルだった。
『それはマスターがレベルアップしてるからですけどね』
先日ダンジョンに籠った時、現れるモンスターをファイアで倒した記憶が新しい。
どうやらあれで結構レベルアップしていたらしく、身体能力から魔力まで相当底上げされていたらしい。
そのせいもあってか、ゴブリンやコボルト討伐という駆け出しが苦戦する敵をあっさりと倒せるようになっていた。
僕はコボルトを1か所に纏めると火をつけて燃やす。そして燃え尽きたところで水をかけてクリーンを掛けると。
そこに3つの魔核が転がっているので拾い上げた。
そしてついでにコボルト達が持っていた長剣を拾い上げると、
「イブ。回収だ」
『はい。マスター』
手に持つそれが手品のように掻き消える。イブが回収してザ・ワールドに収納したのだ。
『お疲れ様ですマスター』
イブの労いの言葉に応えると、次の敵を探して歩き出すのだった。
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