第156話ダンジョン運営実験
『マスター、そろそろ次の探索者を入れても大丈夫です』
(わかった)
僕はその言葉を聞くとともにワールドへの入り口を開いた。
崖に突如現れたのは一見するとどこにでもありそうなダンジョンの入り口だ。
それから暫くするとアスタナ島の探索者達が現れた。
僕が見たことのない人達なので恐らくはCランク探索者だろう。
彼らはダンジョンの入り口を発見すると注意深く入っていった。
『マスター、来ましたよ。今はEランクのモンスターと戦い始めました』
(わかった、取り敢えずこんなもんで十分だから彼らが出て行ったら教えてくれ)
僕はイブに返事をすると他に入ってくるものがいないように入り口を消した。
「とりあえずこれで3組18人が入った事になるか。後は集計待ちだな」
先程出していた入り口の先はゴッド・ワールド内にある例のダンジョンへと繋がっている。
僕はワールド内のダンジョンをカスタマイズするとその試験運用を開始したのだった。
難易度的にはCランク探索者であれば問題はない程度に調整した。
ダンジョンの入り口をこうして表に出すことで、彼らは僕が用意したダンジョンにまんまと入り込んだのだ。
『マスター、探索者さん達がモンスターを倒して中に進んでいます。もうすぐダミーコアを手に入れて魔法陣から脱出しますよ』
暫く作業をしていると、イブからそんな報告が上がってきた。
(わかった。彼らが魔法陣から脱出したら僕も戻る。ところでモンスターは残ってる?)
『ええ、大体は倒されてしまいましたけど。Eランクモンスターが十数匹は残ってますよ』
(そうか、そっちからもSPが入ってるよな?)
僕の質問にイブは答える。
『はい、それにしてもマスターの発想には驚きます。モンスターを捕まえてダンジョンに放り込むんですからね』
そう、僕が考えたのは野生のモンスターを捕まえてきてダンジョンに放り込めばSPを消費することなくダンジョンを運営する事が出来るというものだ。
侵入者対策にもなり、SPも得られるので得しかない。
もっとも、捕らえてダンジョンに運ぶには相手を無力化させる必要があるので中々面倒くさい作業なのだが……。
(とりあえず入り口を適当に塞いでおいてくれよな)
ダンジョンから出られて生活圏を荒らされても困る。僕はイブにそんな指示をだすのだが。
『あまり放置し過ぎるとスタンピードの発生原因になるので忘れないようにしてくださいね』
(スタンピード?)
聞き返すとイブは説明を加えた。
『一般的にダンジョンからのスタンピードと言うのは、ダンジョン内で生まれた訳ではないモンスターたちがダンジョンに入り込み、そこを根城に繁殖してあふれ出した現象を言うのですよ。今回マスターは人為的にモンスターを放り込んでますので、モンスターがこのまま増えてきたら人為的にスタンピードを起こしたことになりますね』
それははた迷惑な現象だ。再現しないように覚えておこう。
(とりあえず入り口を設置すれば普通に探索者を呼び込めることは解ったし。ダミーコアとお土産程度で済むなら余裕でプラスかな?)
ただで潜らせるのも悪いので、ダミーコアと手に入れていた武器や防具に装飾品を宝箱に詰めてある。
他にもモカ王国王族御用達のスタミナポーション等々、売ればそこそこの成果になるに違いない。
僕からすると売りに行くのが面倒なアイテムも、こうして探索者に渡して市場に流れるのであれば問題はない。
その内、市場に浸透してくれば変装せずとも売りさばく事ができるようになるだろう。
『どの探索者達も嬉しそうにマスターが用意したプレゼントを受け取っていましたよ』
(そっか、まずは彼らのモチベーションを上げてあげないといけないから良かったよ)
イブの報告に僕はダンジョン運用の最初の実験が上手くいったと感じるのだった。
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