第224話アルカナダンジョン【悪魔】③
――ドドォーーーーーーーーーーンッ――
何かが爆発する音が聞こえる。
「どうやらあちらで何か争いごとが起きているようね」
マリナは音が聞こえた方に目を向ける。
「駄目。完全にエリクに連絡が取れない。魔力を追跡するのも無理だった」
コールリング手の上で弄ぶとルナは溜息を吐いた。
「まさかたった二人で放り出されることになるなんて……」
マリナは肩を抱くと何かに耐えるように唇を噛む。以前のアルカナダンジョンでの恐怖が思い出される。
ダンジョンのボスである巨人に対し誰もが無力で、あの時エリクが助けに来てくれなかったらこうして生き長らえることはできなかった。
「私は……成長していませんね」
元々マリナは臆病な子だった。剣聖の恩恵をその身に受けるまでは生き物を殺したこともなく、花を愛でお茶を楽しむ。
今では訓練によって自信を得たためなりひそめているのだが、死の危険が迫ったことで否応なしに手が震えた。
そんなマリナの手をルナは握る。
「大丈夫。私たちはこれまで人が出来ないような特訓をしていた。エリクなしでも十分戦えるよ?」
「……ルナ」
お互いに見つめ合うと先程まで感じていた恐怖が薄れていく。
「そうですね、このアルカナダンジョン。私たち二人で攻略して堂々と自由な生活を得ることにしましょう」
元々は自由に結婚相手を選ぶことができない境遇からアルカナダンジョンの攻略を目指していた。ここで諦めるぐらいなら最初から城からでないで親が決めた結婚相手と結ばれていた。
そんな運命に抗う為、マリナはこうしてアルカナダンジョンに入ったのだ。その決意を思い出した。
マリナが復活したことで満足そうに微笑んで見せるルナ。その横顔をみたマリナはふと思う。
これまで長い時間を一緒に過ごしてきたのだが、ここ最近でルナの表情が豊かになっている気がした。それもこれも……。
「ん。どうしたのマリナ?」
マリナの生暖かい視線にルナは首を傾げる。
「いえ、ルナも随分変わったと思いますよ」
「そう? 自分ではわからないよ」
元々、マリナとルナは宝石姫と呼ばれ、周辺国の王侯貴族たちを虜にしてきた。
だが、今のルナはその頃に比べて何倍も魅力的だ。
他者を寄せ付けなかった氷のような雰囲気はなりひそめ、柔らかい表情をしている。
どうしてそうなったのか、マリナはルナに一つ質問をしたくなったのだが……。
「マリナ。敵が現れた。恐らくデーモンだよ」
ルナの【サーチ】の魔法による索敵に反応があったらしい。
「わかりました。では私が突っ込みますので、援護お願いします」
とにかく今は目の前の敵を倒すことに集中するべきだろう。
マリナは気を引き締めるとダンジョンの奥から湧き出してくるデーモンに斬りかかっていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます