第11章 新年明けましてトド増殖中

第224話 ホームセンターデートとお邪魔虫

 1月4日。

 実家を朝9時ちょうどに出る。

 特に持って行く物も無いのでいつものディパックひとつだ。


 駅の前を左へ。

 200メートルちょい歩いて家々が途切れるあたりで右折。

 自転車と歩行者しか入れない小道に入る。

 水路を渡り一応警報器も遮断機もついていますよ程度の踏切をわたったところで。


 ふっと横に気配を感じた。

 確認するまでも無い。

「早かったですね」

「ちょうど朗人が人通りの無いところを歩いているようだったしさ。1時間早かったけれど来ちゃった」

 愛希先輩だ。


 愛希先輩はもう異空間魔法を自由に使いこなしている。

 実家に帰るときも送って貰った位だ。

 おかげで往復の航空券分が浮いた。

 まあエアスケーターのおかげで小遣いに不自由はしてはいないのだけれど。


 さて。

「これからホームセンターへ行きますけれど、いいですか」

「ああ、一緒に付き合うよ」

 という訳で2人一緒に歩いて行く。

 ほぼ10分で巨大ホームセンター到着。


 詩織先輩はここと同じ系列の千葉の方にある店が贔屓らしい。

 でも僕は地元のせいもあってここが一番使いやすい。

 絶対的な広さは向こうの方が大きいかもしれない。

 でもここでも充分。

 無い物は無い位に物が揃っている。


「何か目当ての物があるのか」

「市販品でどんな物があるかを見るのがメインの目的ですね。どんな物があるかを知っていれば、何かを作る時に色々参考になりますから」


 そんな訳で、鋼材からキャスター車輪から、何でもありありのホームセンターデートが始まった。

 最初は僕の付き合いという感じで見ていた愛希先輩も徐々にテンションが上がる。


「何かうちの露天風呂で見たようなのが山ほどあるな」

「同じ系列の店で買っているらしいですからね。デッキなんてきっとそのままです」

「この材料があれば寝湯とごろ寝デッキをあと3人分ずつ増やせるかな。最近寝湯が狭くてさ」

 

 トド前提らしい。

「場所をどうするかですね」

 と軽く答えておく。

 でも確かに寝湯はもう少し常設で増やした方がいいな。

 しょっちゅうメイン浴槽が寝湯転用されているし。

 後日、修先輩に掛け合ってみよう。


「あと、あの提灯いいな。あれをキッチンに下げて」

 ラーメンと書いた提灯。

 他にも色々種類がある。

「延々と夜食を作る羽目になりそうだからやめておきます」


 そんな感じでのんびりと廻っていると。

 前方に見覚えのある小柄な人影が現れた。

「遅いのです。巨大ハムの解放を今か今かと待っているのになかなか来ないのです」

 詩織先輩だ。

 こんなところまでやってきてしまったか。


「ただこの店はいい感じなのです。私のホームグラウンドと似た感じなのです」

「同じ系列ですからね。品揃えも同じ感じだと思いますよ」


「そうだ詩織先輩。ここの機材で寝湯を少し広げたいんですけれど。あと出来ればごろ寝デッキでふんわりお湯ミストが振ってくる感じのも」

 あ、詩織先輩が悪そうに笑った。


「それはいい考えなのです。なら早速作戦会議なのです」

「えっ、香緒里先輩や修先輩は?」

「事後承諾で問題無いのです」

 詩織先輩は当然のように言う。

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