第244話 風遊美先輩の失言
期末テストが終わった18日金曜日。
保養所に入って冷蔵庫を確認したら久しぶりの素材が色々入っていた。
うん、これは詩織先輩からのメッセージだな。
久しぶりにタイ風料理をバリバリ作れという。
そんな訳で今日の夕食はタイ風料理。
○ 鶏肉御飯(カオマンガイ)
○ ショウガとココナツミルクのスープ(トムカーガイ)
○ 青パパイヤのサラダ(ソムタム)
という感じだ。
カオマンガイ用の茹で鶏は大量に用意してある。
かけるソースも棒々鶏風など、タイ風としては邪道なのも含み5種類用意。
スープもサラダもおかわりを見越した量。
そしてお馴染みパクチー刻み別皿も。
そして御飯皿は今日は平皿だ。
「これは初めての料理だな。さっぱりしているけれど癖になりそうな風味がある」
「南国系料理が本来の朗人の得意料理なのですよ。でも今日は辛いのが無いのです」
「久しぶりだから辛いのは控えました。必要ならカオマンガイ用のタレの赤いのが激辛になっているのでそれを使って下さい」
「私は強烈に甘辛酸っぱいのも好きなのですよ」
「なら明日朝食のスープの1つはそういう味付けにしますから」
そんな感じで、まあトドにならない程度に完食した頃。
「さて、突然だけれどさ。今年はバレンタインがテスト期間だったからサービスだ」
冷蔵庫から奈津希先輩がチョコケーキを持ってきた。
まあ僕は冷蔵庫を使っているから入っていることを知っていたのだけれども。
「あああ、何年ぶりかしら。奈津希のザッハトルテは」
「この本格的な味、本土で探しても無いんですよね」
「キター」
一気に歓声が上がる。
思わずこっちも期待。
修先輩の工作魔法で分割してもらい、各自の皿に白いホイップクリームと盛る。
「ケーキはベタ甘だから甘くないクリームが盛ってある。まあ昔風のチョコケーキだけれどさ」
どれどれ。
ベースはチョコ味のバターケーキ。
中と表面にアプリコットジャムを塗って、更に表面をチョコで覆っている。
表面のチョコが一部結晶化しているのかちょっとシャリっとした感じ。
これがまたいい感じだ。
ベースがチョコバターケーキだからとにかく濃厚。
でもいいチョコを使っているからかくどくは感じない。
甘くないクリームと食べると確かに絶品だ。
「ホテル・ザッハー風のザッハトルテ。レシピとしては古典なんだけれどね。私はこれが好きでさ」
時に紅茶を飲みながらだけれどフォークがもう止まらない。
「やっぱり奈津希のこれは美味しいわよね」
「始めて食べたけれどこれは美味しいです」
他の皆さんにも無茶苦茶好評だ。
「これはお店でも出すんですよね」
「その予定だけどね。向こうで習ってきたのとは系統が違うけれどさ」
「これは時々無性に食べたくなるよな。売っていないんだけれど」
「私も本土のお店を色々廻ったのですけれどね。京都府の福知山にあるお店に美味しいザッハトルテがあります。感じは少し違いますけれど」
「そのお店は初耳なのですよ!風遊美先輩ずるいのです」
風遊美先輩がしまった、という顔をする。
どうも風遊美先輩も魔法を使ってこっそり色々出歩いているようだ。
まあこの人は前にEUの魔法特区にいたとも聞いている。
好みも向こう系なのだろうか。
でもこの人も、知れば知るほど色々出てくる人だよな。
飲んべえだし。
「風遊美先輩、明日の昼過ぎに事情聴取するのです」
これは買い出しに行く気だな。
「もし行くなら研究用にいくつか買ってきてくれ。お代は出すから」
「なら奈津希先輩も一緒に行くのです」
あ、更に香緒里先輩がこそこそと耳打ち。
何やらあのあたりで怪しい話がまとまりつつある模様だ。
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