第156話 まさかここまで奴の手が
土曜日。
僕は保養所のパソコンで島内企業の通販ページを色々見ていた。
基本的に魔法関連企業は個人向けの製品はあまり出していない。
ただ中には例外があって、魔法家電とか便利道具等を特区内及び魔法関係者へ市販している企業もある。
その中で『はじめての魔法工作』シリーズが面白いという評判を聞いたのだ。
そういったキットなら工作練習用にはちょうどいいだろう。
あえて手作業では無く魔法を使って組む事で魔法工作力をあげるとともに、工作魔法に通じる何かを得られないかと思ったのだ。
ちなみに情報源は学生会運営の怪しげな掲示板。
ソフィー先輩筆頭の広報部が管理している学生会Web内のコンテンツだ。
ここが島内情報が一番早く集まる。
毎日常に何スレッドかが立っている状況で、なかなか盛況だ。
さて、『はじめての魔法工作』シリーズは魔法でお湯が沸くポット、冷風機能付き卓上小型魔力送風機といった実用的な小物を作成できるシリーズのようだ。
可愛いマスコットキャラが色々製品の説明をしている。
対象は魔力のある小学6年生以上。
工作難易度は半田ごてを使える程度となっている。
冷風機能付き卓上小型魔力送風機とか。
10分で500ミリの水を空中から供給する補給いらずの水筒とか。
他にも工作を作る為の魔力半田ごてとか汎用基板とか自作用の魔法部品単品販売ページとか……
魔法部品単品ページに飛んでみる。
あれ、このページ、以前に見たような。
まさか。
僕は運営会社詳細というところをクリックしてみる。
『開発・販売 薊野魔法工業株式会社』
おいおいおい、ここかよ!
担当者名は長津田となっている。
ううん、間違いない。
修先輩だこれは。
また先回りして杭を打たれていたような気分だ。
というかOBで卒業生とは言えまだ大学3年生だろ。
どこまで手を広げているんだあの先輩は。
やはり奴こそがラスボスなのか。
でもまあ、悔しい事に。
はじめての魔法工作シリーズ、なかなか色々ツボを突いていて面白そうなのだ。
特にこの『燃やして解決・ゴミ減量シリーズ』なんてなかなかいい。
ゴミ箱の他にも掃除機、三角コーナーと色々タイプがある。
入れて魔力をかけると内容物が完全燃焼して、有毒ガスも出さないシステムだ。
一般家庭にこれがあれば大分便利だよな。
燃えるゴミならもうゴミ出しの必要すらなくなる。
まあそれはともかく。
とりあえず黒幕さんに直談判しに行こう。
Webで注文するよりよっぽど早そうだしな。
という訳で廊下を突き抜けて隣の部屋へ。
修先輩はリビングのいつもの場所でパソコン操作をしていた。
「修先輩、お願いがあるんですけれど」
「うん、何だい」
顔を上げる。
「はじめての魔法工作シリーズの注文です」
「ああ、あれか」
そう言って修先輩はマウスを操作し、今やっているCAD画面を保存した。
「まさか身内から注文が来るとは思わなかったな」
「掲示板で何か色々書き込まれていますよ。何気に普通の家電製品より安くて便利だって」
「それでか、最近妙に売り上げが上がっているの。
本当は術式学園の生徒とか、特区外の魔力がある人対象に作ったんだけどさ」
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