第155話 右もその右もトドばかり
その日は当日の勉強の復習とか明日の予習とかがあったので魔法関係はそれまで。
そして翌日は金曜日。
つまりはお馴染み保養所の日だ。
久しぶりに今日は肉料理。
詩織先輩から
「肉をがっつり食べたいのですよ」
という注文がきている。
そして冷蔵庫の中にはでんと塊肉が。
豚ロースと牛ランプと牛イチボ。
それぞれ3キロくらいの塊で、2個2個1個の計5個15キロ位。
つまり1人750グラム程度。
うん、真面目に作ったら絶対トドを出すな。
でもいいや、金曜だし。
トドが出ても明日までには回復するだろう。
という事で塊肉ならではの料理といこう!
岩塩と胡椒をガンガンにすり込んで放置。
その間にサラダをサクサクと作っておく。
作り終わったら今度は肉を表面だけ魔法でガッと焼く。
ガッと焼くのは表面焦げるまでで、表面焦げたら一気に表面は温度を下げ、全体を63度にしてきっちり10分加熱。
その間に各種ソースをちまちま作成。
最後に肉の温度を下げてやればローストビーフとローストポークの完成だ。
最初の分、1人あたり5枚は切っておいてあとはお任せ。
そのあたりでちょうど炊飯器も作業終了とアラームで知らせてくる。
◇◇◇
1人あたり750グラムの肉を供給しても足りないと言われるこの不条理。
更にチーズローストビーフ&ポーク丼なんてカロリーの化け物を自製する御馬鹿も出る始末。
サラダの処にチーズをカットして大量に置いておいたのは僕だけれども。
なお御飯は例によって追加で1.5升炊く事になった。
まあそんな事をすればトドが出るのは当然な訳で……
「朗人、今日のは絶対確信犯だろ」
愛希トドが何か言っている。
「いや、詩織先輩が肉をがっつり食べたいと塊で買ってきたので」
「全員の御飯が丼で配られた時点で、間違いなく確信犯よね」
「盛り合わせ例で最後にチーズを載せて、上から魔法で加熱なんて悪逆非道だよな」
青葉トドと愛希トドが色々言っているが無視だ。
もう最近はトドがいる混浴露天風呂にも慣れてしまった。
そっちに視線を向ける勇気はまだ無いけれども。
「余ったら明日の朝、ローストビーフサンドにしようかと思ったんですよ。余りませんでしたけれどね」
「おい朗人卑怯だぞその後出し。それを聞いていたら……」
「でも残さず食べたでしょうね」
出たな、沙知先輩。
本日はメインの浴槽がトド用水位なので僕と同じ浴槽にやってくる。
「動けなくなるなんて鍛え方が足りないんですよ」
「魔法で胃袋強化するのなんて邪道だ」
「これも努力というものなのですわ」
努力の方向があらぬ方向を向いているよな。
あ、でも参考までに聞いてみよう。
「そういう魔法を努力して開発って、いったい何をすれば出来るんですか」
「私の場合は必要な
押し同士の妄想はなかなかうまくくっつかないのですが、魔法の方は割と自信ありますの」
一部妙な単語が入ったが、概ね意味は伝わった。
「他にも色々便利魔法は開発しているのですわ。ダイエット用消化吸収抑制魔法とか腸内容物移動速度調整魔法とか」
そしてこの人、やはり有能が間違った方向に向いている。
でも。
「そのダイエット魔法いいな。夏休みここに入り浸ったら3キロ増えてさ。毎日寮と飛行場を3往復走ってやっと2キロ落としたんだ」
「私も教えて欲しいです、その魔法。何キロかは言えないけれど夏のダメージがまだ残っていて……」
トド2人がダイエット魔法に興味を示す。
トド化する程食べまくっていてダイエットなんておこがましいだろう。
そんな事を思いつつも、僕は自分の魔法の組み立ても同時に考える。
さて、僕は何をしたいんだ、本当は。
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