第165話 目覚め

 魔法ブロックは更に情報を伝えてくる。

 北東の上空から辺りを探している詩織先輩。

 そして杖無しで沙知先輩を抱え、冷気魔法で必死に足場を保っている愛希先輩。


 氷の厚みもわかるし付近の海水温も29.5度なのがわかる。

 このままだと5分程度で魔力が切れるのもわかる。

 沙知先輩は魔力を使い果たして気絶状態。


 詩織先輩に届くかどうかわからない。

 でも僕は呼びかける。

 ちょうど中之島の方へ500メートル程。

 その位置で助けを待っていますと。


 詩織先輩が頷いたような気がした。

 そして確かに愛希先輩の方に向かう。

 それを感じた途端不意に感じる眠気のような何か。


 付近の全てが色を失っていく。

 色々聞こえていた音声も遠く小さくなり。

 そして全て真っ白に……


 ◇◇◇


 何か光を感じる。

 目を開けると木目の天井。

 そしてのぞき込んでいる顔。


 ん、これは愛希先輩だな。

 目が真っ赤だ。

 起き上がろうとしてふと気づく。

 僕はまだ目を開けていない事に。


 幽体離脱、という訳でもない。

 ただ視点があちこちに動かせて、周りが見えるだけ。

 部屋にいるのは愛希先輩と風遊美先輩。

 そしてこの部屋はルイス先輩や僕が夜寝ているあの部屋だ。


 いつもの布団が敷かれていて僕が寝かされている。

 そして僕の左腕には何かバンドみたいな物が巻かれている。

 そのバンドが風遊美先輩が見ているパソコンに無線接続されているのがわかる。

 風遊美先輩はパソコンのモニターを見た後小さく頷き、愛希先輩の方を向いた。


「まもなく意識が戻ります。まだ少し魔力が暴走しているようですけれど」

 それを聞いて僕ははじめて今の知覚が魔法によるものだと気づいた。

 そう、きっと僕の魔法。

 一時的に魔法ブロックの力で増大した僕の魔法の残滓。


 愛希先輩も心配しているようだ。

 よし、ちゃんと起きないとな。

 せっかくの愛希先輩の可愛い顔が台無しだ。


 目を閉じている事を意識する。

 視界が遮断され真っ暗になる。

 右手を動かしてみる。

 ちゃんと触覚を感じる。

 よし、大丈夫だ。


 僕は目を開けた。

 うん、さっきと同じ視界。

 でも今度はちゃんと視力で見ているのがわかる。

 なのでついでに声も出るか試してみよう。


「すみません、心配おかけしました」

 首しめられた。

 もとい、抱きつかれた。

 というか泣きつかれたと言うべきか。


「$%&’’(())~~=~==」

 うん、日本語になっていないけれど、心配したんだぞと言っているんだな。

 僕は軽く愛希先輩の背中を軽くたたいて。

 そして軽く抱きしめて愛希先輩が落ち着くのを待つ。

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