第66話 宇宙へ向けて、あるいはある末端信者と食事の関係について

 取り敢えず昨晩の夕食調理の反省事項から行こう。

 食べ盛り20人に対しては豚こま10キロ使用の寸胴カレーでも勝てない。

 本当は3分の1は残して朝御飯転用の予定だったのに。


 ついでに米も6升ですら足りない。

 さらに生卵10個入り4パックすら結果的には使い切る。

 パパイヤ20個使ったソムタムを付けてもだ。


 ついでに福神漬けは1キロパックでも足りない。

 あと牛乳1リットルを3パック飲みきる。

 計算すると色々つじつまが合わない気がするが真実だ。

 今度はカレーの時でも色々サブのおかずを作ろう。


 さて、今朝は早起きして朝6時に学生会工房に来ている。

 僕と典明の他には青葉、修先輩、香緒里先輩、詩織ちゃん先輩、ロビー先輩の魔法工学科直系とルイス先輩しかいない。

 本当は来て欲しかった広報班は全滅している。


 広報班全滅の理由は簡単だ。

 広報班は空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の敬遠な信者であるジェニー先輩およびソフィー先輩の指導下にある。

 その信奉するスパモン教の教えに『燃えるように愛せ』という一節があるそうだ。


 ジェニー司教はそれを『人間に限らず、全ての物を燃えるように愛せ。愛せず後悔するより愛しすぎて後悔せよ』と介錯、いや解釈している。

 それを食べ物に当てはめると『食べずに後悔するより食べて後悔せよ』という事らしいのだ。


 どこまで本気かはわからない。

 『あらゆるドグマは否定する』のも教義らしいから。

 でもうちの広報班はこの解釈に忠実に生きている。

 少なくとも保養所での食事の場では。


 ただ一応沙知先輩に追跡魔法はかけて貰った。

 半分死んでいたからちゃんと魔法が効くかどうかは不明だが。

 あと沙知先輩、半分死んでいる状態だと非常にエロい。

 細身鋭角的な美人(言動除く)が微妙にふにゃっと柔らかくなっていて。

 浴衣もかなり危険な状態だった。

 胸元だの背だの膝上だのチラリズムの見本という感じで。

 あ、余分な事を考えてしまった。


「では、離陸します」

 典明がそう言ってロックを解除。

 昨日と同様試験機はふらっと空中に浮いた後、機首を上に向けて上昇を始める。

 そして追跡魔法もちゃんと働いているようだ。

 位置と上昇している速度等が感じられる。


「さて、これからどうする」

「一度帰ります。最低でも3時間は戻ってきませんから」

「僕も朝飯作りがありますし」

 という訳でベースを工房にしまって保養所へ。


「今回の実験飛行の目的は何なのですか?」

「この原理で高度100キロまで往還できる事の確認と飛行そのもののデータ、そしてプラットフォーム建設の環境の確認です。飛行データや測定データを解析すれば高度100キロにはどんなベースを作れば良いか、ある程度わかるでしょうから」


「という事はベースの実証模型も作る気だね」

「当然です。まあ補給とかは出来ないから高度100キロに滞在するのはいいとこ1日程度でしょうけれど」


「それはその後はどうなるですか」

「一応姿勢制御に滑空機能、GPSをつけてあります。上手く行けばここに戻ってきます。でも往還機ほどの性能は無いので回収できる確率は半々ですね。もう一応図面は引いてはあります。あとは観測データを解析して細部を変える位です」


「楽しみなのです。帰ってくれば色々楽しそうなのです。

 で、話は変わるけれど朗人、今朝の朝御飯は何なのですか」

「本当は『日本のカレー』は残ったのを朝御飯にするものなんですけれどね。

 しょうが無いんで今朝は久々の由緒正しい日本の朝御飯を作りますか。

 白ご飯に味噌汁、焼き魚やたらこやハムや目玉焼き等を並べて、好きなおかずを自分で取る形式で」

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