第77話 僕の課題発表(2)

 後は質問だ。


 後方で女子が手をあげる。

 綺麗な顔立ちの小柄な女子学生だが見覚えは無い。

 入学式やオリエンテーションの時にはいなかったよな。

 彼女は少し考えているかのようにちょっと間をおいて、そして質問を口にする。


「この飛行機械は電子制御を行っていないと聞きましたが、ではどのような制御で飛行をしているのでしょうか」

 女子にしてはかなり低めの声だ。

 そしてその質問なら大丈夫、予想範囲内の質問だ。


「制御はワイヤーを使った手動で行っています。操作できるのは3系統で、いずれも出力調整のみです」

 ホワイトボードに機体を上から見た図を描き、それにMJ管の場所を丸付き数字で書く……


 ◇◇◇


「これでよろしいでしょうか」

「結構です」

 彼女はそう言って座った。


 続いてまた手が上がる。

 これは准教授の新地先生だ。

「この機体の動力はMJ管となっていますが、これは魔力により出力が調整可能なものでしょうか」

 よし、これも想定内だぞ。


「このMJ管は永続魔法を使用した魔力固定式に出力調整用のシャッターを取り付けたものです。ですので出力調整は全てワイヤーを通じたメカニカルなシャッター開閉のみで行い、魔法での操作は考慮しておりません」


 よし、さて次は……


◇◇◇


 何とか質問5つを乗り切って、他の発表を見ながら冷や汗を拭う。

 他は飛行型車椅子、飛行型自転車が2台、実物空飛ぶ絨毯だ。

 基本的に浮力調整具を使った似たようなシステムだ。


 でも飛行型車椅子はなかなか面白かった。

 各種センサを配置してかなり安全方向に自動化を進めている。

 壁にぶつかりそうになったり歩行者とぶつかりそうになると自動停止するとか避けるとか、その辺りの付加機能が豊富だ。

 更に傾き制御とか速度制限とかまあ、センサと制御の見本市みたいな代物だ。

 制作者は魔法工学科の2組の女子で顔しか知らない人。

 でもかなりこれは手慣れていると見た。


 なお他は浮力調整に水ポンプを利用したりメカニズム的にはほぼ同じ。

 強いて言えば絨毯の巻く事が出来る工夫が面白い程度か。

 そういう訳で外へ出て実機の確認に移る。

 これも最初は僕からだ。


「それではこれから展開と組み立てを実施します」

 そう宣言して重いスーツケースを下ろし、ばらしにかかる。

 誰かの時計の音がした気がしたが気にしてはいけない。

 スーツケース形態からロックを外し、左右に引っ張る。

 本体と左右の機器部が展開する。

 更に左右の機器部を前後方向に伸ばし、後は固定ノブを全部ロック状態へ動かす。

 最後にハンドルを立ててロックしカウルを固定すれば完了だ。


「2分43秒」

 この声は典明、貴様か時計で計っていたのは。


「これで乗車できる状態です。操作はハンドル下レバーが基本浮上用。右がアクセル、左が補助浮上用及びトリック等で機体を不安的にする時用です」

 下はラバー舗装されているから埃はそれほど立たないだろう。


「では簡単に動かしてみます」

 乗ってハンドルを握り、ハンドル下レバーを目一杯にひねる。

 機体は一気に3メートルほど浮上した。


「これで浮上し、基本は重心移動で動かします」

 MJ管の噴射音で聞こえないだろうなと思いつつ解説をしながら一通り動かす。

 なおトリック用のレバーはあえて今回は使わない。

 僕が使うと大体うまくいかないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る