第114話 出雲大社に詣でよう
ひととおり駅の色々を見ていたら、30分程度が経過していた。
「ここからは時間を稼ぐ為にタクシーを使いましょう。通りの散策は帰りにやればいいですから」
との理奈先輩の意見でタクシーを2台捕まえる。
前の車に典明と美雨先輩、沙知先輩の2年生コンビ。
こっちが愛希先輩と理奈先輩の3年生コンビだ。
タクシー3人乗りの下座は中央の席だろう。
そう思って真ん中に座ったのがまず判断ミスだった。
つまりは愛希先輩と理奈先輩を両隣に感じながら乗る事になってしまった訳だ。
ちょっとしたカーブのたびに足を踏ん張って動かないように心がけるので精一杯。
両隣からは容赦無く柔らかく熱い感触を感じてしまう。
これは歩いた方が正解だったろうか。
そんな事を思いながら約5分。
ふらふらになりつつ鳥居の前に到着。
木製の鳥居をくぐり、下り坂で歩きやすい道を3人で歩く。
「あ、出来るだけ右端に寄って歩いて下さいね、3人ですし」
「何でだ」
「真ん中は神様の通り道とされているからですわ」
と理奈先輩の説明で右側に寄って歩いて行く。
ちなみに僕を真ん中に右が理奈先輩、左が愛希先輩だ。
参拝者は女性が多い。
女性3人位のグループが多く、次は女性1人旅という感じ。
男性混じりのグループもいることはいるけれど。
うん、どこぞの島と同じようなものかな。
というか特区に分社を招聘したらけっこう賑わうのではないだろうか。
宗教を毛嫌いする人が割に多い特区でも神社は嫌われていないようだし。
実際、特区にある唯一宗教的な建物は飛行場にある神社だったりする。
詣でる人も何故か多く隠れた名所にすらなっているらしい。
日本の神社というか神様は他宗教にも寛容だからだろうか。
そんなすごくしょうもない事を考えつつ歩いて行く。
なお典明達の居場所は不明。
信号のタイミングで見逃して以来見かけていない。
大分先に行っているのかもしれないな。
下り坂の途中で理奈先輩が右折。
小さな、というか細い感じの神社がある。
建物全体は縦に細いけれども屋根は何故か立派だ。
「ここは」
「そこの案内板にもありますように、祓社ですわ。まずはここにお参りして穢れを祓ってもらい、心身を清めるというのが習わしですの。
あと、出雲大社の参拝の方法ってご存じですか」
僕は知らない。
「何か礼とか拍手に順番があるんだよな」
愛希先輩の言葉に理奈先輩は頷く。
「そうです。全国的には神様に対して2礼2拍手1礼ですが、出雲大社は2礼4拍手1礼なんです。ですからそれに注意して下さいね」
という事で3人で並んで理奈先輩に倣って参拝する。
理奈先輩も色々物知りだよな。
しょうもないことや下らない事も含めてだけれども。
沙知先輩もそうだけれどやっぱり優秀にはちがいないのだ、きっと。
色々方向性が間違っているだけで。
まあそれは典明も同罪だな。
手水舎で手と口をゆすぎ、そしてまた鳥居をくぐる。
正面に巨大なしめ縄が見える拝殿が見えるが、理奈先輩は左へ曲がる。
「まずはこっちですわ」
木造の建物の中に牛と馬の像がある。
「この牛の像をなでると学力向上、馬の像をなでると子宝とか安産のご利益があるそうですわ」
「ならこっちだな」
「同じく」
というので愛希先輩とともに牛の像をなでまくる。
何せ典明みたいなのが同じクラスにいると、頭の出来の違いというのをまざまざと思い知らされるのだ。
理奈先輩とずっと一緒の愛希先輩なら僕の気持ちもわかるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます