第115話 理奈先輩、キレる

 そして巨大な注連縄が見える拝殿へ。

 夏休み中だけれどお盆の後の平日だからか人が多い訳でもない。

 なので3人揃って並んで祈願。

 ここも例の2礼4拍手1礼だ。


 僕が祈ったのは大した事ではない。

 このまま平穏かつ平和に暮らせますように。

 それだけだ。


 色々大変な事はあるし女難事案も結構ある。

 それでも魔技高専に来てからの毎日はそれ以前より遙かに楽しいし充実している。

 それに僕も満足していない訳ではないのだ。

 さて終わろうかと薄目で見てみると、愛希先輩も理奈先輩も依然祈ったままだ。

 結局3回ほど確認してしまった。


「結構長かったけれど、愛希先輩は何をお祈りしたんですか」

「うーん、朗人には秘密だな」

「私には教えてくれるんですか」

「理奈はもっと問題が多そうだから不許可!」

 等といいつつ右からぐるっと周回する。


 建物の中の本殿を見て、神無月に神々が泊まるという長屋のような建物を見て。

 そしておみくじをひき、ついでに愛希先輩は何かお守りを買っている。

「それは?」

「縁結びの糸ですね。噂ではかなり御利益があるらしいですよ」


 引いたおみくじを見てみるが、どうもこれは吉か凶なのかよくわからない。

 神に念じれば生活がよくなるというような事が書いてあり、そして左に項目別によし悪しが書いてある。

 まあ内容的にはどうも良い事が多そうなので、きっといい内容なんだろうな。


「朗人はどうだった?」

 と愛希先輩が聞いてくるのでお互い引いたおみくじを交換。

 なお理奈先輩はおみくじは引いていない。

「うん、朗人のは大体良さそうだな」

「愛希先輩のもいいじゃないですか、なくし物以外は」

「そうだな」

 そう言って2人で木に結びつける。


 最後に神楽殿の大注連縄を見て、今来た道を戻るのかと思ったら理奈先輩がまた別の方向へと案内する。

「どうせなら別の方向から帰りましょう」

 と言って、そばや等の店が並ぶ方向へと歩いて行く。

 とその辺りで……


「うーん、本当は口に出すつもりは無かったのですが、見ていて大変じれったいのでちょっとこれから余計なお世話をしようかと思います」

 何故か理奈先輩がそんな事を言い始めた。


「理奈、それはちょっと急すぎる!」

「問答無用!ここからは強制連行。愛希がしっかりしないからです!」

 ん、何か理奈先輩、ひょっとしてキレている?

 でも僕には思いあたる事は無い。

 一方愛希先輩は心当たりがあるようだ。


「理奈は頭の回転が早過ぎて過程を吹っ飛ばして結果に行ってしまう事が良くあるんだ。しかも自分的に答えが出ているのに他人が悩んでたりするとイライラしてくるという」

「結果が見えているのに過程にこだわるのは時間の無駄ですわ」

「その割にはBLは平気なんだけどな」

「あれも展開が遅いのは嫌いですわ。ヤル事はヤってヤらないと」


 なんか変な話になってきたなと思いつつ早足の理奈先輩についていく。

「取り敢えずおすすめの店に入らせて貰います。まだ時間的には30分程度の余裕がありますから」

 結局たどり着いたのは行きにタクシーを降りた出雲大社の鳥居の前の店だった。


「ここ出雲大社前はぜんざいの本場です」

 と言って中へと入る。

 暑いので僕は冷やしぜんざい、愛希先輩と理奈先輩はぜんざい氷を頼んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る