第116話 理奈先輩の爆弾発言
「まあ理奈、甘い物でも食べて少しは落ち着けよ」
「愛希、でも貴方の問題ですよ」
「物事には人と案件によって色々な進行速度があるの」
「まどろっこしいのは苦手なんです」
喧嘩とは少し違う感じだ。
何だろうとは思うが何やら微妙な感じもする。
へたに口を出すと危険な感じだ。
ぜんざいは割とすぐにやってきた。
一目見て、僕もぜんざい氷にした方がよかったかなと少し思う。
ぜんざい氷は氷の上に小豆と栗の甘露煮、紅白の丸餅が乗っていて、見た目にも黄色が華やかで美味しそうだ。
「それじゃあ、いただきます」
と一応3人で声をかけて食べ始める。
あ、冷やなのに小豆がほくほくして美味しい。
「朗人、なんなら栗少し食べてみるか」
あ、愛希先輩、僕の視線に気づいてしまったかな。
「え、いいんですか」
「ほいよ」
ありがたく少しだけ愛希先輩の栗をいただく。
あ、やっぱりこれも美味しい。
そして理奈先輩は何故か苦笑。
「うーん、こうやっているといい雰囲気なんですけれどね。何でなかなか進まないんでしょ」
えっ?
「理奈!」
「見ていて本当にまだるっこしいんですよ。どう見てもお互い好意を持っているように見えるのに全然進まないのって」
えっ、えっ、えっ、えっ、えーっ!
ちょっと待て。
理奈先輩、どういう意味だ。
「理奈!」
「少なくとも愛希は朗人君に好意を持ってますよね。かなり最初の頃から。横にひっついて案内していたり露天風呂でもそれとなくガードしていたり。違いますか」
おいおいおい、本人達を前にそれを言うかよ。
僕がどういう表情をすればいいかわからないじゃないか。
愛希先輩はふっとため息をついた。
「最初は新人に対するサービスだよ。
確かに色々覚えはある。
最初の露天風呂の時とか。
「最初はそうかもしれないですけれどね。そんな考え方をするなんて、術式学園時代はトラブルメーカーだった愛希が随分変わったなとは思いますわ」
「その理由は理奈もわかるだろ。あそこはぶつかって壁を壊さなければ先に進めなかった。今はそうじゃない。だからこそ理奈も色々遊べているんだろ」
「それはまあ、認めますね。でも今の愛希が朗人君に好意を持っているのは事実ですよね。というか朗人君が落ち込んでいるように見えた時、自分じゃなくてわざわざ詩織先輩に声をかけさせたり」
えっ。
「あれは私が食べ過ぎで動けなかったから。それに詩織先輩自身も気づいていたし」
「そうですかね。私は色々考えた末、詩織先輩の方が適役だと考えてあえてお願いしたんじゃ無いかと思ったのですけれど。それでも愛希が自分で声をかけない事について、私は大変まどろっこしい思いを抱かせて貰ったのです」
いつの話かは僕にもすぐわかった。
典明の宇宙計画を聞いて自分の課題制作物がみすぼらしく感じたり、青葉の露天風呂問題に悩んだりしていた時の事だ。
とすると……
「という訳で私は言いたい事を言ったんでここで消えますわ。時間はまだあるので大丈夫、あとはゆっくり2人でお話し下さい」
そう言って理奈先輩は伝票を持って立ち去る。
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