第178話 爆発事故発生!

 1年生有志の方の工作物が終わったので今日の日曜日は学生会で。

 まあ結局学生会工房にいるのは同じなのだけれども。


 学園祭で販売する新素材刀は無事に100振り完成した。

 拵えが若干違う物があるけれど本体は基本的に同じ。

 今年は不均質鋼の丸拵えバージョンのみだ。


 ただルイス先輩と翠先輩に従来構造と今回の構造を比較して貰った結果2人とも

「絶対新型の方がいい」

という意見だったのでこれでいいのだろう。


 詩織先輩と香緒里先輩との3人で工作機械を使いながら販売用木製ケースを作成。

 ケースに10振りずつ入れて準備完了かなという時だ。


 ドーン!

 大学部の方でかなり大きい音がした。

 今のは……爆発音?


「攻撃魔法失敗の音とは少し違うです。ガラスらしき破砕音も。事故なのです」

「そう言えば今日、修兄が大学の研究室に行くって言って……」

 そう言って香緒里先輩が走り出そうとするのを詩織先輩が止める。


「私の移動の方が早いですよ」

 そう言った直後、ふっと宙に浮いた感覚がした。

 詩織先輩が異空間移動魔法を発動したのだ。


 到着した目の前はガラスが吹き飛びアルミサッシが曲がった研究室。

「修兄!」

 吹き飛んだ元掃き出し窓だった場所から飛び込もうとする香緒里先輩を僕と詩織先輩で止める。


「待つです!爆発の原因を確認しないで飛び込むと危ないのです」

 僕はモノセロスを構えて全力で検定魔法を使う。


 空気成分は特に異常なし。

 内部に他に爆発しそうな物も無し。

 危険なのは上に残っているガラスの破片くらいか。

 魔法で衝撃波を飛ばして落ちそうなガラス片を排除する。


「これで大丈夫です。注意して入って下さい」

「ありがとう!」

 そう言うとともに飛び込む位の勢いで香緒里先輩が入っていく。

 次いで詩織先輩、そして僕。


 部屋内は酷い事になっている。

 飛び散った破片のせいか照明のセードがほぼ全部割れている。

 パソコンのモニタ等も全部割れている。

 ただ鉄製のロッカーは割と無事なようだ。


 ぱっと見ると爆心地は後部の作業用テーブル。

 その上に置いた何かの装置が爆発したようだ。

 ん、何かこの破片に見覚えがあるな。

 そう思った時だ。


「修兄、修兄?」

 何か微妙な呼びかけ方をしている香緒里先輩の声。

 見ると金属製の事務机を変形させたような怪しい物体がある。

 全体的に長円形の繭のような形だが、素材の一部が明らかに事務机だ。

 そして入口や出口のような物は無い。

 何だこれは。


 でも香緒里先輩にはこれが何かすぐわかったらしい。

「詩織ちゃんお願い。多分この中で修兄、魔力の使いすぎで気絶していると思う。きっと爆発の兆候を感じて机で自分のまわりを囲う防護壁を作ったけれど、そのため魔力を使いすぎて気絶した状態。

 詩織ちゃんならこの中から修兄を出せるでしょ」


「まったく世話が焼けるのですよ」

 そう言いつつほっとしたような表情の詩織先輩が魔法を発動する。


 爆発から見て物体の影になっていて破片等の無い場所に修先輩の姿が現れた。

 確かに意識は無い状態だが、見たところ傷とかは見当たらない。


 香緒里先輩が修先輩の手をつないで何か魔法を使っている。

 あ、修先輩が目を開けた。

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