第226話 シンプルかつ豪華で背徳的な昼食

 翌日はまあ、露天風呂の改修作業だ。

 露天風呂の各風呂部分はステンレスの枠に乗っかったユニット構造になっていた。

 個人用ワンオフ仕様にここまでする必要は無いと思う。

 何でもシステム化するのは修先輩の癖のようだ。

 パイプもフレキシブル管で簡単に接続してあるだけ。

 なので配置転換とか改良は至極やりやすい。


 そんな訳でデュオコーンの魔力に頼りながら作業する。

  ○ 風呂の配置を変え、

  ○ 寝湯ユニットを増設し、

  ○ 新規の寝湯ユニットを作り、

  ○ ジェットバスも増設し、

  ○ ミストシャワーのデッキを作り……


 朝9時からそんな作業をして疲れた頃。

「そろそろ生ハムもお目覚めの時間なのです」

と詩織先輩から請求が来た。

 うん、言いたい事はわかる。

 去年からずっと待っていたんだろうし。


 そんな訳でお昼御飯は生ハム様の初披露だ。

 用意したのは詩織先輩特選のバケットの他、クリームチーズ、レタス、トマト、ルッコラ。

 あとはやはり詩織先輩特選のオリーブオイル。

 塩分は生ハム様が供給するからあえて加えない。


 さて、主役の生ハム様。

 昨日中に真空パックから開け、付属していた専用台にセットしている。

 まずは教科書通り、足首に普通の出刃包丁で切り込みを入れる。

 そして専用包丁で皮を剥ぐように切っていく。


 取り敢えず黄色いところは食べられない。

 でも肉をカバーするとき必要なので取っておく。

 何回か切ると今度は白い脂の層。

 これはいい出汁がでるそうなのでしっかりキープ。


 そして。

「おーっ!」

 やっと赤い肉が現れた。

 薄くそぐように切っていく。


「私は厚いのも食べてみたいのですよ」

 という人と頷く人の為に、ちょっと試しに厚めに切ってもみる。

「薄く切った方が美味しいらしいですけれど、比べてみますか」

 当然全員が頷くので厚いのを6枚。


「うーん、確かに薄い方が美味しいかもしれませんね」

「ちょっとしょっぱいのです」

「濃厚さは感じられるんだけれどさ」

 という訳で再び薄切りに変更。


 なお、生ハムは削るそばから試食と称して食べられていく。

 切っても切っても皿の上のハムが増えない。

 更に風遊美先輩は隣の部屋からワインを持ち出してきている。

 いいのか昼から。

 まあ風遊美先輩に注意できる人はまだ保養所に帰っていないけれど。


 何とかそれでも皿1枚に敷き詰められる程度に生ハムカット済みを確保。

「いただきます」

 声とともにバケットにチーズや野菜と生ハムを載せて食べ始める。

 うん、美味い。

 何かこう、タンパク質が上手に熟成されるとこんな味になるんだなという感じ。

 野菜類やバケットとともに、折角切った生ハムは瞬殺。


「今度は私が切ってみるですよ」

 と詩織先輩が専用包丁を構える。

 沙知先輩が無言で冷蔵庫方面へ。

 チーズの塊とバケットやビスケットの追加を持ってくる。

 僕は追加の紅茶を入れ、そして風遊美先輩のボトルは既に残り半分。


 うーん、無駄に豪華で微妙に背徳的な昼食だなこれは。

 そして詩織先輩なかなか切るのが上手い。

 僕以上に赤い部分を薄く長く広く削っている。

 そんな感じで延々と昼食の時間が続き……

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