第28話 男2人反省会
「いやあ、やり過ぎた」
「自覚はあるんだな」
夜11時。
保養施設という名のマンションから寮へ帰る途中だ。
うちの寮に門限は無い。
あっても遊ぶところが無いから意味が無いという事らしい。
酒が飲める店は島内2軒。
風俗系は無いしピンクなホテルも当然無い。
それがここ、特区という名の僻地の離島の実態だ。
「しかし典明、ずいぶん酷い歌知っているな」
「吾輩は男子校であったからな。ああいう下らないのが大好きな奴が多かった。まさかこの島で受けるとは思わなかったけれど」
あの後のカラオケ会場ははジェニー先輩、ソフィー先輩、沙知先輩、詩織ちゃん先輩と典明の歌謡ショー状態になってしまった。
詩織ちゃん先輩はまだいい。
早くて人には歌えない歌とかそういう面白さで勝負しているから。
他の4人は萌え系とかお下劣系とか変態系とか犯罪者系だ。
そして典明の曲チョイスはまさに変態系とか犯罪者系。
ホモの後はロリ、ショタ、男の娘系というまあ酷いのばかりを歌っていた。
普通のカラオケだったら絶対無さそうな危ない歌詞のものばかりだ。
しかもどの曲も結構受けが良かった。
世界はきっと何か間違っている。
あの空間が間違っていたのかもしれないが。
「明日は7時集合だっけ」
「ああ」
明日は朝から魚釣りに行くそうだ。
例年の新人歓迎行事だと言うが、何か色々間違っている気がする。
ただ間違っているのがこの島なのか学生会なのかそれとも僕の狭い常識か。
それが既にわからなくなりつつある状態だ。
保養施設は泊まれるようだし現に泊まっていけとも言われたのだが、僕も典明も断った。
何せほとんど女の子の中での雑魚寝である。
理性がこれ以上いじめないでくれと泣いている。
困った事にどの先輩もそれなりに綺麗だったり可愛かったりするし。
「しかしあの環境、よくルイス先輩は頑張っているな」
ロビー先輩はどうも何も考えないという大技を駆使しているようなので考慮に入れない。
「小生も危うかった。なのでカラオケで理性共々暴走させて発散した」
なるほど、あの壊れた選曲はそんな理由もあったのか。
「他に新入部員を入れないと危険かもな。勧誘するか」
僕は典明に提案してみる。
「やめとこう。学生会の立場で見れば次はバランスを考えて女子、それも昨年はいなかった攻撃魔法科がベストだろう。今の状態に同級生女子が入ったら……」
「確かに」
納得した。
理性が更に危険だ。
「しかし何故こうなったんだろう」
わずか1日であまりに環境が変化した事に僕は戸惑いを隠せない。
「理由は簡単だ。朗人が詩織先輩の色仕掛けに負けた。それだけだ」
うっ、なまじ自覚があるだけに否定できない。
でも。
「最新鋭の工作機械に魂を売った輩には言われたくないな」
「魔法工学を志す者としてやむを得ぬ選択だった」
典明はもっともらしくそう言って頷く。
「まあ早くも失恋した朗人に免じてこれ以上責めるのはやめておこう」
ぐさっ!ぐさっ!
今の攻撃、結構厳しい。
実は3年も先輩だし相手もいるんだけれど。
詩織ちゃん先輩、やっぱり可愛いよな。
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