第27話 保養施設の夜(2)

「ここなら大丈夫かと思いまして」


「いい度胸なのです。漢なのです」

 詩織ちゃん先輩が凄くにやにやしている。

 そして典明も悪そうな笑みを浮かべている。


 何を入れたんだ典明!

 それに詩織ちゃん先輩が言った、くそ何とかお兄さんとは何なのだ?


「なら歌う前にソフィーと沙知を呼ぶです。あの2人は確かこれを踊れるです」


「望むところです!」

「言いましたね」


 詩織ちゃん先輩はこそこそと腰をかがめて歩いて行って、例の怪しげなゲームの方へ行く。

 踊れるというからにはダンス的な歌なのだろうか。

 でも沙知先輩が絡むと微妙に変な想像方向へ行ってしまう。


 あ、でもそろそろ美雨先輩の曲が終わりだ。


 そして表示されるのは僕が入れた地底人で一番騒がしいブな曲。

 凄く気になりながらも僕はマイクを美雨先輩から預かり前へ。


 本当は何を始める気か観察したいところだが、この曲は台詞回しが早くて単語がややこしいので視線をディスプレイから離せない。

 気になりながらもいきなり全開で始めて、何とか最後の手拍手2拍まで歌いきる。

 ほおっ、久しぶりだけれど何とか歌い切れた。


 さて、何やらステージ前を広くすべく椅子とか移動させていたけれど、何をする気だ。

 僕はマイクを典明に渡し、ずーっと下げられた椅子の処まで移動する。


 出てきたのは典明の他に、ソフィー先輩と沙知先輩。

 典明を中心奥に、ソフィー先輩と沙知先輩が前両側にという感じで位置する。

 更にジェニー先輩も来て椅子席最前列に陣取っている。


「逆のフォーメーションれすね。マイクがあるし部屋の形からしょうがないれすが」

 ジェニー先輩が何を言っているのかは僕には意味不明だ。


 そしてふらふらとルイス先輩もやってきた。

 椅子席の最後尾、つまり僕の横に座る。


「何か知らないが助かった」

 どうもルイス先輩、だいぶ女性陣にいたぶられていたようだ。


「何をしていたんですか」

「嘘発見器にかけられて色々質問攻めにされていた」


「嘘発見器って?」

「あの座卓にあるセットがそうだ」


 パソコンと指紋認証装置のような物が見える。

 あれが嘘発見器か。

 そんな物までここにはあるのか。


 と、何やら音が鳴り始めた。

 前2人が両手を上に上げ、伸ばしたままま横方向までゆっくり下ろす。

 きれいに動きが揃っている。


 軽快な曲が鳴り始めた。

 中腰になって2人は軽快に動き始める。


「ところで何が始まるんだ」

「僕もわかりません」

 そう答えた時だ。


「やらないか」


 そう典明が呼びかけをしたかと思うと、踊っているソフィー先輩、沙知先輩、そして最前列で見ているジェニー先輩が『うっほ、うっほ、うっほ………』と変なかけ声をかけ始めた。


 何だこれは。


 典明が歌い出す。

 曲自体は軽快なノリのいい曲だ。

 だが良く聞くと歌詞が変だ。

 怪しい台詞や微妙なあえぎっぽい声まで途中に入るし。

 これて、ひょっとしてもしかして……


「男色の曲か、これは」

「そうらしいですね。僕も始めて聞きました」


 でも前の方は結構ノリノリだ。

 ヤラナイカ、とか変なところで声をかけているし。

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