第2章 魔女のいる日常
第29話 乱れて今朝はものをこそ思へ
午前7時集合。
だから僕と典明は7時ちょうどにあの保養所の玄関ドアを開けた。
鍵は掌紋認証で昨日のうちに登録済み。
ノックもインタホンも無用と昨日のうちに言われている。
そして見えたのは……
なんとも酷い光景だった。
大部屋で布団並べて寝ている連中の寝相の悪さと寝乱れた浴衣姿。
色々生々しく見えてしまっている。
エロい。
思わず
「失礼しました」
と言って玄関扉を閉めてしまった位だ。
朝から男子高専生が見るにはきつすぎる。
30秒後。
反対側の玄関ドアが何故か開いた。
「悪い。今日はこっちだ」
ルイス先輩が違う玄関から顔を出している。
「そっちも保養所ですか」
「中で繋がっている」
そう言えば何か昨日聞いたな、と思いつつそっちの玄関へ。
ぱっと見る限りこっちは普通の家だ。
のれんとか変な温泉アピールも無い。
「こっちは会社関係者の住居なんだ。昨日いた中では香緒里さんとかジェニーさんの。4人住んでいて、全員元学生会だ」
なるほど、つまりはスポンサー様の住居という訳か。
「いいんですか、住居なのに」
「今の向こうよりはマシだ」
なるほど、確かにその通りだ。
「失礼します」
そう言って上がらせて貰う。
「向こうは昨日盛り上がりすぎてまだ時間がかかると思う」
そう言いながらルイス先輩は僕らを応接セットの処に案内してくれる。
そこには女性4人と男性1人が朝のお茶という感じで談笑していた。
見覚えあるのは香緒里先輩だけで、あとは知らない顔だ。
「紹介する。全員学生会のOBだ。左から順番に由香里先輩、月見野先輩、風遊美先輩、修先輩、香緒里先輩。そしてこっちは今年の新入生候補で典明と朗人、どっちも魔法工学科だ」
「はじめまして。こんな感じの場所ですけれどまあ気にしないで遊びに来てね」
この人、由香里さんが香緒里先輩のお姉さんなんだなとは見てすぐわかる。
雰囲気は違うが顔や色々がよく似ているのだ。
「こちらこそ。今度入りました緑山典明と三輪朗人と言います、宜しくお願いします」
典明が言ってくれたので合わせて頭を下げる。
「こちらこそ。本当はあと2人、翠とジェニーがいる筈なんですけれど、昨日のお祭り騒ぎに便乗して向こう行ったまままだ寝ているみたい。ごめんなさいね」
この人が月見野先輩だ。
小柄だけれど雰囲気は落ち着いた大人の女性という感じだ。
「いや、昨日の騒ぎの件では申し訳ありませんでした」
典明、若干気にはしているらしい。
「気にしないでいいよ。何かあれば騒ぎになるのはいつもの事だし。ただわりと皆、朝は弱いしさ。だからルイスもこうやって良く逃げてくると」
「修先輩に言われるのだけは納得いかないですね。全ての元凶ですから」
「まあ認めるけどね」
という事は間違いなくこの人が露天風呂を作ったりあの杖を作ったりした本人という訳か。
まあ男は1人だし間違いようが無いが。
一見普通の魔法工学生という感じだ。
「まあ起きて動けるようになるまでしばらくかかると思います。ですからまずは紅茶かコーヒー、どちらにしますか?」
「紅茶ですけれど自分で入れますよ」
「こちらの部屋はOBの領域ですから」
そう言って香緒里先輩が立ち上がる。
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