第160話 まずは愛希先輩とお出かけだ

「しかもこの回路、プログレスの回路を組んでもまだブロックに余裕がある。

 他に基本回路全てで使用していないブロックもあるし。


 これはきっと、色々な回路を組んで魔法杖の開発をするための試験用だ。

 何ならブロックを新規に作って自作の回路を作ってもいい。

 または今まで開発された機構と違う組み方をしてもいい。

 そうやって作った杖の性能をすぐその場で試せる。そのためのものだな、きっと」


 うわあ。


「そんなものを市販しようとしたのか、修先輩あのひとは」

「そうなのですよ」

 出たな解説担当しおりせんぱい


「修先輩はそういう処にまるで気づかない人なのです。そういう意味での常識はオスカーちゃん以上に無いのです。本人以外は皆認めている事実なのです」


 詩織先輩やオスカーちゃん先輩に常識が無いと言われるのも酷いよな。

 まあそれに値するのはよくわかったけれど。


「という訳でそれはフルパワー版の杖と同じ機能を持っているのです。だから組み替え次第ではプログレス以上の杖を作れる可能性があるのです。

 ただ、今のところカスタムブロックを自作してもプログレス以上の回路は作れていないのです。親父が色々チャレンジしているのですが成功していないのです」


 確かに本来は田奈先生とか修先輩レベル用の品物だな、これは。

 でも面白い事は間違いない。

 後で色々試してみよう。

 そう簡単に上手く行くとは思えないけれどさ。


「さて、そろそろ食事の時間なのです。スパモン教の昼食は時間に間に合わないと伸びるのです」

 という事で俺達は大広間へ。


 ◇◇◇


 昼食の本格札幌味噌バターラーメンダブルチャーシュー付きを食べた後、冷蔵庫に常備されているハムとチーズ、適当な生野菜を使ってバケットサンドを作る。

 バケットは詩織先輩が飢えた時用に何本か極上のを冷凍してあるので拝借。

 今では冷凍品解凍も杖無しで完璧に魔法で出来る。

 我ながら料理用魔法ばかり進歩しているが、何せ使う頻度が文句なく多いのでしょうが無い。


 そこそこ美味しそうに出来たバケットサンドをタッパーに詰めディパックへ。

 魔法ブロックも気になるがまずは愛希先輩とお出かけだ。

 このまま魔法ブロックをいじっていたら一日中外に出ない可能性もあるしな。

 せっかくの秋のいい天気、少しは楽しまないと勿体ない。


 ペットボトルのお茶も2本入れて準備は万端。

 ただ問題は……


「愛希先輩、動けますか」

「うん、大丈夫だよ」

 愛希先輩、今のラーメンで若干トド化中。

 この人、本当に懲りない。


「それに快適かつダイエットにもなるいい移動法があるんだ」

 にこっというよりにやっという感じで愛希先輩が笑う。

 そして愛希先輩はそのまま玄関へ。

 靴を手に持つ。

 えっ。


「朗人も靴を持って」

 ここから出ないの?

 というと、まさか……


 愛希先輩は靴を持ってベランダへ。

 そのまま露天風呂の外側をまわり、いつもの僕の魔法練習場兼駐機場へ。

 空飛ぶシリーズは今日は2機が停まっている。

 1機は修先輩の簡易潜水艇。

 そしてもう1台は僕作成、愛希先輩使用の折りたたみフライトボードだ。


 なおフライトボード、市販版はエアスケーターという名前になったらしい。

 しかし愛希先輩用のこれはオリジナルとも市販版とも既に別物。

 改造に改造を繰りかえし、今では愛希先輩と同等以上の魔力とバランス感覚持ちでないと乗れない代物になっている。

 

 MJ管は全て魔力感応型に換装され、操縦者の意のままにコントロール可能。

 更に太めの主翼とダブルの垂直翼が付き、空中性能もアップした。

 それでも未だスーツケースサイズに折りたたみ可能なのは僕の意地って奴だ。

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