第159話 手軽で危険な試作品
実際作るのはそれほど難しくなかった。
少なくとも難易度普通で組む分には。
ランナーの切り離しとか回路の半田付け等、出来るところは極力魔法を使う。
単純な組み立て等も極力手を使わず魔法で。
ブロック部分は作り終え、残りは卓球のラケットにも似た形の本体最後の工程。
保持するとともに魔力を供給するグリップ部分。
ブロック回路を内蔵するラケット型部分。
グリップ部分をラケット型部分のフレームにはめ込み、ネジで固定すれば完成だ。
うん、思ったより上手く出来たぞ。
ランナーの切り離しを魔法でやったおかげで仕上がりもそこそこ悪くない。
時計を見るとまだ11時5分。
だから説明書を見ながら簡単な回路を組んでみることにする。
説明書に載っている回路は6種類。
○ 基本の魔法杖の回路
○ 二重増幅型魔法杖の回路
○ 火炎放射等直線型魔法放射の回路
○ 付近冷却等拡散型魔法放射の回路
○ 純魔力増幅回路
○ 高出力術式増幅型魔法杖の回路
うん、完全に修先輩の趣味的な作品だな。
魔法杖の開発キットそのまんまという感じだ。
まあ修先輩が実際に作っているのはきっともっと複雑なものなんだろうけれどさ。
とりあえず気になった純魔力増幅回路というのを組んでみる。
ブロックを2段12個使うわりとコンパクトな回路だ
説明通りブロックをはめて、念の為にもう一度配置を確認してからブロック表面を覆う蓋を閉めてロックする。
軽く手に持って構える。
え、この感触は、ひょっとして。
魔法ブロックを置いて工作時に使っていた生命の杖テュルソスの初心者用バージョンと持ち替える。
うん、どう考えても魔法ブロックの方が杖としての能力が高いような……
そして出力が高すぎる為に工作では使わなかったモノセロス改に持ち替える。
うん、まんまこれだな。
出力的には大差無い。
アンテナ部分を除いて考えるときっとまるで同じ。
とすると、まさか……
こういう場合は検定魔法持ちに確認して貰うのが一番早い。
という訳で隣に出て見回してみる。
典明はカラオケの場所にいた。
なので頼んでみる。
「ちょっと検定してほしいものがあるんだけれどいいか。さっきの魔法ブロックなんだけれど」
「了解でありんす」
あっさり了解してついてきた。
という訳で現物を前に頼む。
「これ、説明書通りに組んでみたらほぼモノセロスと同じ性能が出たんだけれど。僕の気のせいじゃ無いよな」
典明は手をかざして少し考える素振りをし、そしてこの部屋にある典明用のロッカーから杖を取り出して構えて考える。
そして更にそれでは飽き足らず、ブロックを外して組み替える。
そして更に杖を構えて頷いた。
「拙者が見る限りではあるが、そちの言う事は正しいと思うぞよ。なお高出力術式増幅型魔法杖の回路を組んでみた結果、拙者のヘリテージよりも出力が高いのが確認出来たぞよ」
えっ、それではまさか。
「つまりこの回路図の二重増幅型がヘリテージの簡易型。
純魔力増幅回路はモノセロスそのまま。
高出力術式増幅型魔法杖の回路はプログレスそのものの回路だな、間違いない」
つまりこの魔法ブロックの正体とは。
『簡単に出来る禁制品級魔法杖の開発キット』そのものだ。
そんなの発売できる訳が無いだろう。
何を考えているんだ修先輩は。
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