第119話 失言だろうか、それとも……
愛希先輩に付き合ったら2人で80皿ほど食べてしまった。
当然のことながら僕も動くのが辛い。
愛希先輩はそれでも、
「去年よりは大分楽だな。歩いても気持ち悪くならないし」
とか言っているけれど。
でも確かに今の回転寿司、美味しかった。
東京辺りで食べるのとはネタの種類も大きさも味も違うような気がする。
新鮮さでは島で食べるのも同じ筈だけれどもこっちの方がより美味しい気もする。
脂ののりとかもあるだろう。
島だと僕自身が調理している事も関係しているのかもしれない。
今いるのは函館市内の湯の川温泉という処にあるホテル。
そして僕は愛希先輩、理奈先輩、美雨先輩、沙知先輩、典明と同じ部屋だ。
まあ取ってあるのが4区画で、12畳、12畳、10畳2間、10畳2間。
だから4人、4人、6人、6人となるのは人数割りとしては正しい。
でもこの年齢の宿泊が男女同室というのはやはりどうかと思うのだ。
ルイス先輩が頑張っても是正出来ていないところをみると、今後とも改まる事は無いのだろうけれど。
なお僕の部屋の6人中、沙知先輩と美雨先輩以外の4人は食い倒れている。
なおかつ美雨先輩がスポーツドリンクとウーロン茶のペットボトル装備で典明との空間を作ってしまっている。
どうも食べ過ぎの典明を看病しているらしい。
だから2人を無視して他の4人でだべろうかと思ったのだが。
よく見ると典明がヘルプを出しているような気配がする。
なら仕方ない。
典明も呼ぼう。
でもこの状態でただ呼ぶのも芸が無いよな。
うーん、それならば、だ。
こっそり沙知先輩を呼んで相談。
「あの2人を巻き込みたいんですけれど、ちょうどいいゲームか何かありますか」
沙知先輩は悪そうな笑みを浮かべる。
「そういう時用の取って置きのがありますわ。少々お待ちいただけますか」
何か足取りも軽くという感じで部屋を出て行く。
「おいおい、沙知に悪い事言ったんじゃ無いよな。どう見ても悪巧みの顔だぞ」
そう愛希先輩に言われて若干不安になりつつも。
「単に皆で楽しめるゲームが無いか聞いたんですよ」
その瞬間、理奈先輩、愛希先輩の間に何か緊張感らしきものがはしった気がした。
ただその後の反応は正反対だ。
愛希先輩は『何という事をしてくれたんだ』という感じ。
理奈先輩は『それは楽しい事を思いつきましたね』という感じだ。
「沙知が持ってきそうなゲームというと、アレだよな」
「当然、そうですね」
何だろう、アレとは。
そして2分後、沙知先輩はごっそりと人数を連れて現れた。
これはもう1つの6人部屋の面子だな。
ジェニー先輩、ルイス先輩、ソフィー先輩、ロビー先輩、エイダ先輩、青葉だ。
ソフィー先輩はパソコンを、沙知先輩は何か小箱を持っている。
そしてルイス先輩は渋い顔をしている。
一体何が始まるんだ。
何か僕は不味い事を言ったのか。
座卓を2台つなげて5人2人5人と座り、正面に画面を皆の方へ向けたパソコンがセットされる。
勿論典明と美雨先輩も強制参加だ。
それにしてもこのパソコン画面、何となく見覚えがある。
確かルイス先輩は嘘発見器と言っていたあの画面と似ているような……
「それでは香緒里先輩作成による新型検知器の性能評価を兼ねて、第1回衝撃ワードバトルを開催します!」
ソフィー先輩が高らかに宣言。
そして全員にUSBメモリ大の指紋認証装置のようなものが配られる。
「まずはこの装置の黒い面を親指に当てるように持って下さい。黄色のランプが点灯しますので、点灯したら自分の名前を装置の上にあるマイクに告げて下さい。こんな感じにです」
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