第260話 疲労困憊、腹一杯

 疲れた。

 本当に疲れた。


 いやはや。

 サイクリングはなかなかに最高だったのだ。


 海は聟島に負けず劣らず綺麗。

 ふと振り返ると円筒形の石油タンクが延々と連なるシュールな風景もあったり。

 川みたいなでも海沿いに走ったり。

 ふっと降りたビーチが最高だったり。 

 そんな処で2人でおにぎり食べたり。


 パイナップル畑の横を走ったり。

 多分これはサトウキビ畑だろうというのもあったり。

 よく見るとタバコ畑だったり。

 えっほえっほ上った坂の先が隣の島へ渡る橋で絶景だったり。

 製塩工場を見学して併設のカフェで御飯食べたり。


 ただ愛希先輩の走ったコースが無茶苦茶だったのだ。

 観光案内所のお姉さんの推奨を全て混ぜたようなスペシャルコース。

 道も観光客用のではない、細い地元専用な感じの道をガシガシ走る。


 坂も結構きつい。

 聟島の最高点より標高が高い場所もあるし。

 製塩工場のあった島なんて全体的に標高高かったしさ。


 多分愛希先輩、色々な見所を調べてくれたのだろう。

 結構誤解を受けやすいが愛希先輩は下調べとかはきっちりする方だ。

 勉強なんかも割にくそ真面目に予習復習するタイプだし。


 ただ愛希先輩の下調べとか準備はあくまで自分基準。

 そして愛希先輩、体力魔力ともにスペックがかなり高い。

 更にいざという時には杖無しでも魔法移動可能。

 これは前に沙知先輩と酷い目に遭いそうになった時の反省からだそうだ。

 鍛えた結果、今は杖無しでも50キロ程度は余裕。

 つまり愛希先輩基準の予定に合わせると常人は酷い目に遭う訳で……


 勿論僕も一応準備をしたし忠告もした。

 筋肉疲労を少しでも和らげるゼリー状機能的食料を食べたりとかさ。

 けれど今回もまあ、そうなってしまった訳だ。


 なお僕の魔法は料理に酷使しているせいか、色々な処で進化している。

 検定魔法の類似品なのか、今回の自転車での走行距離等のデータも魔法で出せる。

 その結果は総走行距離42キロ、ただし高低差上りだけで525メートル。

 普段自転車に乗り慣れていない身には結構しんどい。

 そしてお尻が痛い。


 自転車を返し、海中道路から今度はバスで沖縄本島へと戻ってきた処でも誤算が。

 愛希先輩にとってはきっと計算済みだったのだろうけれど。

 キングタコスの支店がバス停からちょっとの場所にある。

 まあ行きにも気づいていたし、嫌な予感はしていたのだけれどさ。

 お約束でタコスタコライスタコバーガーチキンバラバラと無茶頼みして。


 その結果。

 バスの一番後の端でトドがぐったりしている。

 胃袋の活動に全神経を集中しているとのことだ。

 横で僕は足の筋肉をを小さく動かしている。

 少しでも血流を良くして筋肉痛を和らげようという試みだ。

 まあお互い無駄な抵抗なのだけれど。

 そして自転車とバスとでお尻が痛い。


 このバス、なかなかに時間がかかる。

 那覇市のバスターミナルまで約2時間。

 でもこのバスを降りるともう待ち合わせには間に合わない。

 というかこのバスでも待ち合わせ19時の40分前ちょいに県庁前に到着。

 つまり、時間の余裕はそれほど無い訳で……

 なお、移動魔法は今回はよっぽどの場合以外使用禁止だ。


 うーん。

 今回も反省事項は多いな。

 勿論今日のサイクリングは楽しかったのだけれども。


 よし。

 来年までにバイクの免許を取ろう!

 でも免許証取得後1年は2人乗り禁止か。

 なら愛希先輩に自動車免許を取って貰って、レンタカー借りる方がいいか。

 免許は夏の旅行後に合宿免許で取りに行くと言っていた。

 でも僕はちょっと不安だ。

 愛希先輩可愛いし。


 そんな事を思いつつ、バスはゆっくり走っていく。

 ゆっくり過ぎてなかなか那覇が近づかない。

 でもあまり早く近づいても実は困る。

 この後は夕食会。

 少しでも胃袋の状況を良くしておかないと……

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