第221話 どこかの運命の神様が

 さて、美雨先輩だ。

 今までのプレゼントを考えると……あれ。


「さて、美雨先輩のプレゼントの前に、また司会を少し変わります」

 また朱里先輩がマイクを取った。


「さて、美雨さんのプレゼントを発表する前に、美雨さんから個人的にプレゼントを渡す人がいるわよね。それを出してちょうだいな。それが無いと、今回そのプレゼントが美雨さんに当たった意味がなくなるから」

 美雨先輩は少し顔を赤らめ、そして小さく頷いて更衣室へ行って戻ってくる。

 小さな箱が2つだ。


「じゃあ典明くん、これ」

 まわりの視線に押されて典明が前に出て、そして受け取る。


「それと同時に美雨さんのプレゼントも開けて貰っていいかしら、美雨さんが作って美雨さんに当たったプレゼント」

 やっぱり美雨先輩、自分のプレゼントが当たった訳か。

 でも美雨先輩って、確かルイス先輩と場所を変えたんだよな。

 なら……


 さて、典明へのプレゼントは腕時計だった。

 ブランド名は入っていない。

 銀色で高そうだが薄型で着け心地も良さそう。

 あとダイヤと思われる宝石が飾られている。

 きっとあのダイヤとか細工とかは美雨先輩の自作なんだろうな。

 時計の内部機構とか針あたりだけ市販品で。


 そして美雨先輩が自分にあたったのも時計だった。

 こっちはサイズ的に女性用。

 同じように銀色の薄型で、ダイヤが数カ所飾られている。

 そっくりのデザインの時計だ。


「どう見てもそれはおそろいの時計でしょ。だからその時計は美雨ちゃんが自分で受け取るのが正しいかな、そうどこかの運命の神様が判断したようですわ」


 理解した。

 つまりルイス先輩と美雨先輩の場所交換。

 ルイス先輩に女装コスチュームキットを受け取らせるのが本意だった訳では無い。

 2人にペアの時計がいくようにする。

 こっちが本命だった訳だ。

 きっと、多分。


「そういう訳で典明君もお返しというか、自分が用意していたプレゼントをさっさと美雨ちゃんにお渡しなさい。

 あと他人のふりしている愛希さんと朗人君、そこも同罪ですわ。2人とも相手にプレゼント持ってきているの、把握済みですのよ。

 いいわね相手のいる方々は。特区は男性少ないから優良物件はすぐ売れてしまうのですわ。相手がいてもあえて渡さないこなれた組み合わせもいるようですけれども」


 おいおいおい。

 いきなり公開処刑か。

 しかも後半愚痴入っているし。

 でもまあ、確かに用意はしているんだけどさ。


 大先輩のご命令なので仕方なく持ってくる。

 そして愛希先輩はというと……

 なにやら巨大な、それこそ愛希先輩が入ってしまいそうな箱。

 それをずるずる女性更衣室から引っ張ってきた。


 なんだそれは!

 一体何が……


 まず先に僕から愛希先輩にプレゼントを渡してしまおう。

 段ボールを丸めて、更にその上から包装紙を巻いた例の物を愛希先輩へ。

「良かったら使ってみて下さい」


 愛希先輩が包装をほどいていく。

 出てきたのは見た目には水色の折りたたみ傘。

 だが愛希先輩はすぐに気づいたらしい。

 傘の柄を魔法杖握りで持つ。

 にやりと笑う。


「これは……これは凄いな。確かに目的地が見える感覚が掴める。これは朗人が作ってくれたのか」

「ええ。まあ元になる理論は修先輩や修先輩の同僚の方のもので、僕がやったのは組み合わせの理論だけですけれど」

「魔法杖、それもかなり特殊だけれど強力な力を感じるのですよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る