第153話 魔法を試行錯誤中

 寮の自室で自分の持ち魔法を色々試してみる。


 今のところ僕が出来るのは

  ○ 物質に熱を与える

  ○ 物質の熱を奪う

  ○ 電気を流す

  ○ 分子構造を変える

  ○ ものを動かす

程度だ。


 勿論この範囲でも自由に出来る訳では無い。

 例えば鉛筆の芯をダイヤモンドにするのは魔力的に無理だった。

 米のデンプンをアルファ化するのは簡単なのだが。


 つまりの処この魔法が一番活躍するのは料理だったりする。

 米もほぼ瞬時に炊けるし揚げ物も思い通りのあげ加減で作れる。

 おまけに熱を加えるのも冷ますのも杖を使えば自由自在。

 そんな訳で今日の夕食のメニューは南蛮漬けだったりするけれど。


 ただそれじゃ実用的すぎて夢が無い。

 魔法と言うからにはもう少し夢とかロマンが欲しかったりするのだ。

 さもなくば授業にも役に立つような工作魔法とか。

 検定魔法もどきも一応は使える。

 でもエネルギー効率が悪いのか魔力を食うしわかるのも三面図位程度。

 他には材質程度まではわかるが動作確認とか損傷判定までは出来ない。


 うーん、やっぱり僕のは料理魔法だよな。

 そんな事を思っていると部屋のインタホンが鳴った。

 この魔力の感じは典明だな。

 面倒なので魔法で鍵を開ける。


「どうぞ」

 典明が入ってきた。


「どうしたんだ」

「今日のカフェテリアのメニュー、いまいちだった」

 飯よこせという事だ。

 ちなみに週に2回位こういう内容の訪問がある。


「いいよ。おかずは冷蔵庫に入っている南蛮漬けでいいか」

「恩に着る。吾輩学食ランチの怪しいランチョンミート炒めが苦手でな」


 この特区はフェリー運航中止の際に備えて色々食料を備蓄している。

 そのため期限切れ寸前の備蓄食料がカフェのメニューに出る事もある。

 今日はその日だったらしい。


「米は何合」

「1合でいい。一応食べているし」

 という訳でキッチンの下から米を1カップ出して丼に入れ、軽くとぐ。

 後は適当に水を入れてモノセロスで変成魔法をかけてやるだけ。

 土鍋炊きほどの味は出ないが悪くない程度には炊ける。


 典明が勝手知ったるという感じで冷蔵庫から南蛮漬け入りのタッパーときんぴらゴボウ入りタッパーを出す。

「おお愛しのお袋の味よ」


「というか僕の手抜き料理だけどさ、魔法使用の」

「いや、魔法で料理というのは普通出来ないだろう。それだけの知識が無ければ」

 そう言いつつ典明は僕から御飯の丼を受け取る。


「大ありがたや銀シャリの恵み。拙者この恩は必ず」

「いつもの米袋で頼む」

 典明との取り決めで、飯5食たかる毎に米五キロ袋1袋を典明が買ってくる事になっている。

 別にただでも構わないのだが典明はその辺几帳面だ。

 米も安い奴でいいのだがちょっといいのを買ってきたりする。

 まあ米袋の三分の一は典明が消費しているのだけれども。

 典明は1回あたり1合以上は食べるから。


「そう言えば何をしていたんだ、今。妙な魔力の揺らぎを感じたのだが」

「いやさ、もう少し面白い魔法を使えるようにならないかと思って」


「そうか、小生そなたの魔法は充分面白いと思うぞよ」

「いやさ、せめて料理以外にも検定魔法とか工作魔法とか使えるようになれば楽しいかなと思って」

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