第232話 最強魔法使いの帰還
1月15日土曜日は久しぶりの強制労働の日。
ただ時間はいつもより長い。
用事がない人は17時まで。
何と8時間勤務だ。
時給1万円なので8万円の収入!
仕事内容は午前中は毎度お馴染みバネ作業。
午後は部屋の大掃除だ。
ただの大掃除では無い。
使っていなかった看板スペースとか道路に面している部分のタイルの補修までだ。
まあ魔法をガンガン使うからそんなに大変では無いけれど。
「という事は、そろそろ菓子屋やパン屋の開店準備日程が決まったですね」
「来週日曜、23日に2人とも戻ってくる予定ですって」
香緒里先輩がそう告げる。
おーっという感じで3年生以上中心に拍手が起きる。
帰ってくる2人を直接知っているのがその世代だから当然だけれども。
「もう新居とかは決まっているのですか」
「4月1日から公社の住宅に入る予定だってさ」
「あと結婚式を3月27日にするって。そこのホテルで」
おーっ!
何か拍手まで巻き起こる。
しかし結婚式か。
早いよな。
「まあホテルの会場が狭いから、披露宴1次会は先生方や身内中心らしいけれどね」
「2次会は創造制作研究会や学生会関係の直接知っている代を中心にやる予定だそうです。大学の合宿所を借り切ったから大人数でも大丈夫みたいです」
何か3年以上が盛り上がっているが僕には今ひとつ実感は無い。
当人達を知らないというのが理由のひとつ。
そして結婚式という話題がまだ僕から遠いのも理由のひとつだろう。
何せまだ僕は高専1年生。
同年代で結婚なんて言えば出来ちゃった婚で高校中退コースだ。
性的方面に興味が無いかと言えば勿論……だけれど。
それでも結婚となるとかなり意識的に遠い。
愛希先輩は何か今ので盛り上がっちゃっている様子だけれども。
ふと見ると典明も僕と同じような感じだ。
◇◇◇
保養所に帰ってもその話題で持ちきりだ。
なので愛希先輩に聞いてみる。
「奈津希先輩ってどんな人なの」
「うーん、色々凄い人としか言い様が無いなあ。凄く強いけれど凄く気さくで優しいし。このマンションに実家があるからほぼ毎日この部屋にいて、当時の全員分の食事を作っていたんだ。料理以外も何でも出来て、いろんな意味で理想の先輩だったな」
うーん、よくわからない。
まあ学年的に愛希先輩が1年の時の5年だしな。
「どんな魔法を使っていたのかな」
「今のルイス先輩と同じだよ。火水氷風雷土全部。それを組み合わせて炊飯魔法とかもやっていたな。他に揚げ物とか煮物とかも」
「いや、僕じゃとてもじゃないけれど同じと言えないな」
あ、ルイス先輩も加わった。
「確かに僕も色々な種類の魔法を使えるけれど、それは奈津希先輩に組み立て方を聞いたから出来たんだ。それにあの人の模擬戦闘での強さは魔法そのものじゃない。戦いの中での観察力だな」
「私の全力でも確実には勝てない3人の中の1人なのです。私がプログレス使って予知魔法全開で本気で戦っても、勝率はせいぜい2割程度なのです」
おいおいおい。
そこまで強いのか。
詩織先輩は攻撃魔法科を含む学内でも『問題外』の強さを誇る。
模擬戦では常に『杖無し、予知魔法無し、異空間魔法は攻撃には不使用』ルールだそうだ。
それでも現5年の攻撃魔法科トップが防御に徹してなんとかなるかというレベル。
それより強いというと……
「参考までに残り2人は誰ですか」
本筋と違うがつい気になって聞いてしまう。
「アホゲル親父とうちの親父なのです。魔力では勝っているのですが経験値が違いすぎるのです」
1人はゼットンという訳か。
アホゲルというのは確か
田奈先生の会話に時々出てくるので名前だけは知っている。
「まあどんな人かはそのうちわかると思うよ。落ち着いたらこの部屋に入り浸ると思うから」
様子を見に来た修先輩がそう言ってまとめてくれた。
うん、あまりに話が膨らみすぎたのでそうするのが一番だな。
あ、でもついでに聞いてみよう。
「田奈先生ってそんなに強いんですか」
修先輩は肩をすくめる。
「僕と同じ魔法の最高級版だよ。その魔法を認識出来る全ての範囲で思考とほぼ同じ早さで展開できる。工作魔法と言ってもスイッチの入切からテレビ画面の画像操作、更には直接他人の脳の特定部位に微弱電流流したりとかも出来るし。
実際、何度も誘拐されては自力で帰って来ているらしいしね。それもとんでもない国の軍の施設とかから。本人は施設見学とか言っていたらしいけれど。
まあ世界最強最悪な魔法使いの1人だろうね」
何という事だ。
うちの担任はそんなに恐ろしい人だったのか。
「ちなみにアホゲル氏とは
はあ、そっちもやっぱり世界最強レベルですか。
色々問題外、了解しました。
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