第48話 ウルトラマン対ゼットントリオ

 疲れていても避ける一方でも問題無い。

 その気になればいくらでも一方的に攻撃可能。

 要は仮面ライダー対ウルトラマンという訳か。

 仮面ライダーに勝ち目は無い。


「ルイス、エグいのですよ酸欠攻撃は酷いのです」

 詩織ちゃん先輩がそんな事を言っているのが聞こえる。


「もう十分だろう。今日の特訓は終わり」

 その言葉と同時に酸欠攻撃も終わったようだ。

 魔女3人ははあはあ息をしている。


 ルイス先輩お疲れ様。

 俺達はそう思わずにはいられない。

 でも詩織ちゃん先輩はそう思わなかったようだ。

「なら最後に。対ルイス戦の模範演技を一発行くですよ!」


「おい待て詩織!」

 ルイス先輩はそう叫んだ後瞬時に空へと逃げた。

 どうも今までの動きは本気で無かったようだ。

 それがしみじみわかる位の超高速で不規則に飛び回っている。

 僕の目には所在がかすれて見える程だ。


 しかし、それでも。

「疲れているです。甘いのです」

 詩織ちゃん先輩には通用しないらしい。


 ルイス先輩の動きが空中で止まり、そして重力に引かれて落ちていくのが見えた。

 途中でその姿が消え、そして次の瞬間ルイス先輩を抱き留めた姿勢の詩織ちゃん先輩が地上に現れる。


「死角から背面に掌底一発なのです。取り敢えず身体に異常は無いですが5分は動けないのです」

 洒落にならない。

 これがゼットントリオ級の実力か。


「なるほど、あれが最強か……」

「だな」

 僕と典明はうなずき合う。


「そろそろこっちは行くよ。研究室に顔を出す時間だし」

「私もですわ」

 という訳で大先輩2人は去って行く。

「では私はルイスを連れて戻るですよ」

 詩織ちゃん先輩もルイス先輩を抱えたまま姿を消す。


 そして。

 魔女3人組が帰ってくる。


「なんかもう、とんでもないわね」

「だからここは面白いんですよ」

「まあな、飽きない事は保証済みだぜ」

 そんな事を言いながら。


「じゃあ僕らも戻るか」

「そうだな」

 僕と典明も校舎方面へ向けて歩き出す。

 典明が前に言った『人間では何人かかっても倒せない』という言葉の意味がしみじみ納得できる戦いだった。

 そして仮面ライダーとウルトラマンとゼットントリオの差という訳も。

 その辺りを色々思いながら歩いて行く。


 学校外れの最僻地であるここはどの施設からもかなり遠い。

 歩いてもなかなか校舎が近づかない。

 しかも草が生えていたり爆撃跡のような穴が空いていたりで大変歩きにくい。

 苦労して歩いているうちに体力のある攻撃魔法科プラス1名に追いつかれる。


「しかし三輪も緑山もよくこんな面白い活動見つけたわね。やっぱりこんな感じで一戦交えて……な訳ないか」

 僕らにそんな魔力が無い事に青葉も気づいたらしい。

「僕は刀の制作体験を通じてだな」

「拙者は工房にある工作機械に魂を売った」


「なるほどね、学生会の特権で色々抱えている訳か」

「そうでもないですわ……まあ結果的にそうなっている面はありますけれど」

 厳密に言えば工房の高価な工作機械類は詩織ちゃん先輩の私物だし、ルイス先輩や詩織先輩のような強者が集まっているのも単なる成り行き。

 それでもまあ、結果的にそうなっているのには多分色々理由なり何なりあるんだろうけれども。


「学生会はもう募集終了なのかな」

「攻撃魔法を使える魔法使いなら大歓迎ですわ、ねえ愛希」

「そうだな。今の2年は補助魔法科だけだし」

 あ、ちょっと不味い展開になるかもしれない。


 金井というか青葉の事が嫌いな訳では無い。

 わりとさばさばしていて性格が良く、見た目だって悪くない。

 ただ同級生というか同じクラスの女子が学生会に入るとすると……

 頭に浮かぶのは金曜日問題だ。

 別名、露天風呂問題。


 だからと言って、いやだからこそ僕も典明も何も言えない。

 少なくともこの件に関しては。

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