第89話 やっぱり周りは化物ばかり
思わず上機嫌になって、そしてふと気づく。
意識して魔法を使えるようになったせいだろうか。
いつのまにか魔力とかそういう感じがわかるようになっていた。
例えば露天風呂方面。
壁越しに強大な魔力の気配がいくつもあるのが今ならわかる。
そして目の前の小柄な先輩からも。
大分前に典明が言っていた、仮面ライダーとかゼットンとか言う意味。
それがようやく僕にもわかったのだ。
「どうしたんだ?」
愛希先輩の質問にどう答えようか迷う。
「いや、魔力がわかるようになってから見ると、改めて凄いなって……」
愛希先輩はそれだけで僕の言った事の意味を理解したらしい。
「まあ学生会は化け物揃いだからさ。でも私なんて最初学生会に入った時なんて『道場破りに来た、いざ尋常に試合を』なんて言ったんだぜ。ルイス先輩に対して」
「それは……いい度胸ですね」
そうとしか言い様がない。
「だろ、でルイス先輩がこともあろうに詩織先輩を連れて来てさ。
それでも私はまだ馬鹿だったしさ。戦い方次第ではルイス先輩に勝てるんじゃ無いかと思っていたんだけどな。
もう理奈と2人で全力の波状攻撃仕掛けても全然ルイス先輩に通用しなくてさ。こっちは制限無しでそれこそ最後頃には殺す気で魔法使っているのにだぜ。
そして対詩織先輩戦、こっちは2人でもう最初から本気で殺す気で全力でやっているのにまるで攻撃効かない。挙げ句の果てには攻撃の合間に詩織先輩にデコピンされる始末だ。あきらかにあっちは全力どころか実力の半分も出していない。あれは心が折れたな、全く」
そんな話をしながら部屋に戻る。
「あ、魔法どうだったのですか」
「初めてにしては上々だよ」
詩織ちゃん先輩にそう答えている愛希先輩の隣で僕は密かにびびっている。
びびっているというのは変な表現だがそうとしか言い様がない。
何だこの詩織ちゃん先輩のでたらめで強大な魔力は。
もう詩織ちゃん先輩なんてちゃん付けで呼べる状態じゃないぞこれは。
何というか、手持ちのメスシリンダーで東京ドームの内容積を測るような圧倒的な絶望感だ。
そして室内にいる先輩方もそろいもそろって化け物級。
典明が言うような仮面ライダーなんて等身大の存在じゃ無いぞこれは。
まあ修先輩とジェニー先輩とロビー先輩と典明、この4人は除こう。
他は皆さん化け物だ。
間違いない。
「こんな方々相手に道場破りを仕掛けたんですか」
確かにそれなら愛希先輩は勇者だ。
「いやあの時は会長が修先輩で書記がジェニー先輩だったしさ。ならルイス先輩さえ倒せれば……」
でも当時の副会長は確か香緒里先輩だろ。
今風呂から上がってきたけれど、あの強大感はルイス先輩より遙かに上だぞ。
流石に詩織先輩よりは下だけど。
そして当時の学生会の他の構成員はソフィー先輩とルイス先輩と詩織先輩。
ソフィー先輩の魔力は質こそ違うが強大感としてはルイス先輩とそう変わらない。
そして詩織先輩はもう、化け物中の化け物。
うん、間違いない。
愛希先輩は間違いなく勇者だ。
「あら愛希、道場破りの事話したんですの」
理奈先輩が向こうで笑っている。
「まあな、多少の魔力の差くらいで動じるな、って」
「でも楽しかったですわね、あの時。ああこれで私の新しい楽しい生活が始まるんだな、って思えて」
そうか、理奈先輩も一緒に戦ったような事を言っていたな。
とすると理奈先輩もかなりの勇者だ。
まともな神経とは思えない。
そして向こうの方ではクラスメイトの怪物が何故か頷いている。
「うんうん、理奈先輩はそうでなくては」
そうなのか青葉!それでいいのか!
魔法使いは魔法を使えるだけじゃ無く、運動能力だけでも無く、神経すらも特別製なのか。
なんかもう、何なんだこの世界は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます