第88話 魔法使い僕、爆誕!(3)
愛希先輩は露天風呂の外側を回って飛行漁船等を停めておく場所へ出る。
今は僕が課題で作ったあのスポーツ器具兼飛行機械が停めてあるだけだ。
今はほぼ愛希先輩が通学や気晴らしに使っている。
そして他には露天風呂との間を区切る竹垣のみ。
向こう側は主に女子大生の皆さんが入浴中だ。
「ここなら耐魔法処理がしてあるから多少失敗しても大丈夫だ。だからまあ、気にせずやってみな」
「あれ、そこ誰かいるの」
由香里先輩の声。
「ええ、愛希です。朗人が少し魔法を使えるようになったので、ちょっとだけ試しに使ってみようかと思って」
「ん、わかったわ」
風呂から声をかけないで欲しい。
どきりとするじゃないか。
見えないけれど。
取り敢えず杖を前に構えてみる。
あの招き猫程ではないが光が出ているのが見える。
あの招き猫は光線だったが、これはふんわりとした広がりを持つ光だ。
さて、これをどうすればいいのかな。
火よ出ろとか思っても火球を思い浮かべても何も起こらない。
「あ、そうか。そっちのタイプだな。ならちょっと待ってろよ」
そう言って愛希先輩は露天風呂の方へ消える。
そしてすぐに桶を持って出てきた。
中には水が入っている。
愛希先輩はその桶を下に置く。
「この中の水が目標だ。自分の力がこの水に集中するようにコントロールする。最初だから立ち位置を変えたり杖の向きを変えたり工夫してみればいい」
なるほど。
まず足の位置を変え、杖から出る光の中央が水に当たるようにする。
そして今度は光がそこに集中するように念じる。
なかなか上手く行かない。
光が閉じたり広がったり、変化はするのだ。
でも上手く収まらない。
「コントロールの方法は色々だけれども、私の場合は画像的なイメージかな。魔法が上手く行った時の情景をイメージする感じだ」
なるほど。
なら僕もそうイメージしてみよう。
そう、凸レンズで光が収束していくようなイメージだ。
中央へ向かって、どんどん密度を増して。
光がだんだん収束していく。
そう、その調子だ。
そして光はほぼ桶の中に集中して……
そして水面から水蒸気が出てきた。
「OK、止めて確認してみな」
愛希先輩の言葉で僕は集中を止める。
杖も取り敢えず下ろして桶に近づいて確認する。
手を近づけるともわっとした熱さを感じた。
お湯と言うより熱湯に近い。
「魔力のイメージが熱線なのかな、それともエネルギーそのものなのか。
いずれにせよそれを集中させたら水が熱を帯びた、って訳だ」
「愛希先輩の魔法も同じような感じですか」
「ああ。エネルギーというか理屈系だな、私のは。魔力を使って目標物の分子を運動させるイメージなんだ」
なるほど、それなら確かに同じような感じだな。
「今は分子を運動させる方ではなく、運動を止める方を練習中。これが出来れば冷却も出来るしさ。更に電子を剥ぎ取って電気魔法に発展させる事も出来るらしい。まだどっちも上手くは出来ないけど。
でも、まあ、お互い頑張ろうな」
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