第90話 非公式イベント『魚祭り』
毎年中間テスト後か期末テスト後に学生会主催で暑気払いの会をやるらしい。
それが今年は今週の水曜日なんだそうだ。
内容はこの会の通称が全てを物語っている。
その通称とは『魚祭り』。
つまり学生会で魚を釣りまくった魚を皆に食べて貰う会だそうだ。
学生会内のレクリエーションで釣りすぎた魚をさばくため、急遽でっち上げたのがきっかけというこの会。
数年時を重ねて今では定番化しているとの事である。
何でも当日は1000人近い人が集まるらしい。
会場は今年は魔技高専体育館。
なお会場設営は学園祭実行委員会がやってくれるとの事。
他にドリンク売店をハツネスーパーが、白飯売店をカフェテリアがそれぞれ出店するという大規模なイベントだ。
学生会主催の非公式イベントとしては最大のものらしい。
「というか何で非公認なんですか」
「何せ始めた経緯が経緯だかららしい」
とは愛希先輩による。
「あと、このイベントにかかる費用も例の会社の寄付ですか」
「これは学生会費とイベントに協賛しているハツネスーパーとカフェテリアの寄付金だな。人数が出るんであっちもそこそこ利益が出るらしい」
との事だ。
そのため本日8月1日土曜日と明日の日曜日は学生会総出で作業との事。
既に釣り組のルイス先輩、詩織先輩、理奈先輩、沙知先輩、エイダ先輩は出船している。
残りの僕らはハツネスーパー開店後、買い物をして学生会工房へ向かうそうだ。
「でもそんなに魚が釣れるんですか?」
僕は愛希先輩に尋ねる。
1000人に配るなら、1人あたり200グラム食べるとして200キロ。
廃棄率等を考えると最低250キロ程度は釣らなければならない。
「だからさっき行った面子なんだよ。一応竿は持って行っているけどさ、竿を使って真面目に釣りをしていると思うか」
あ、なるほど。
この前の詩織先輩のように、何らかの魔法を利用したやり方がある訳だ。
「それより多分、今年一番大変なのは朗人だと思うぞ。今から覚悟しておいた方がいいな」
愛希先輩が怖い事を言う。
「えっ、何故ですか」
「魚を捌くだけなら私やルイス先輩でも出来ますが、ちゃんとした煮物や焼き物、もしくは揚げ物もタレをかけたりするなら調理をする人が必要という事です」
あ、説明に美雨先輩も加わった。
「実は学生会の主任料理担当者が一昨年パリへ行ってしまったんで、煮物や焼き物は2年間省略していたんだ。揚げ物だけ市販のソースやマヨネーズを用意してね」
「でも焼き魚が欲しいとか、ブリ大根お願いしますとかまあ要望が多いんです。最近2年間刺し身以外は漬けと揚げ物とあら汁だけだったのですが、その前は担当者1人で揚げ物煮物焼き物全てを作っていましたしね」
「どうやって調理していたんですか、その人は」
千手観音のような魔法があるんじゃないよな。
「奈津希先輩は火も風も冷却も魔法で使えたからさ、魔法を使った超時短クッキングが可能だったんだ」
そんな大魔法使いと比較しないでくれ。
「でも詩織先輩も色々怪しげな野菜類や香辛料を工房の冷蔵庫に入れてましたしね。多分やる気満々ですよ」
詩織先輩、何を買ったんだ!
何かもう不安しか無いのだけれど。
そして美雨先輩は今度は典明の方を見る。
「典明君も安心しない方がいいです。今年は体育館が会場なので工房の冷蔵庫から50メートル程距離があります。そこを何度も台車で往復することになると思います」
「そうなんですか」
「確か昨年は400キロ近い魚を処理しましたしね」
それって……どれくらいの量かわからないぞ。
「まあどうしようもなければ詩織が手伝ってくれると思いますわ」
ソフィー先輩がそう助け船を用意してくれた。
「でも揚げ物係にしろ、配膳運搬係にしろ大変だと思いますわよ。あら汁係と案内係は基本的に女の子が担当ですから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます