第46話 炎と氷、もしくは仮面ライダー対仮面ライダー(2)

 大丈夫か理奈先輩。


 まあ詩織先輩もルイス先輩も愛希先輩も動いていないところを見ると大丈夫なんだろうけれども。

 時々余波で来る炎の破片はその都度僕達の先2メートル位で跳ね返されている。

 ルイス先輩あたりが風魔法で防護しているのだろう。


 不意に炎の竜巻が色を失った。

 急速に勢いが衰え、色あせる。

 そして炎の壁を上空へ押しやるように出てきたのは理奈先輩。

 服に白い物が付着しているのは霜だろうか。


「惜しいですね。コントロールはなかなかですが、収束率が今ひとつですわ」 

そう言って理奈先輩は手で服の霜を払う。

「もう一度チャンスを与えます。私を殺す気で本気の攻撃をして下さい。この程度では、私は青葉を認められません」


「詩織!」

 ルイス先輩の言葉に頷いて詩織先輩が姿を消した。

 でも2人を止めるような気配は無い。

 おそらく2人について知っているだろう、中学から理奈先輩と一緒だったという愛希先輩も何も言わないし動かない。


「わかりました。それでは次はこの杖の力もお借りして、全力で参ります」

 金井はそう言って一礼すると今までと違う構えを見せる。

 右手で持った杖を右後ろに大きく伸ばし、左足を前に半身に構える。


 一方理奈先輩もそれに合わせてか少し姿勢を変えた。

 金井を正面に見て両足を軽く開き、杖を両手で横にして持つ。

 そして。


 金井が一気に飛び出した。

 杖を一気に前方に振るい、その杖の前方に炎の槍を纏わせ、全身から後方へ炎を吹き出させてロケットのように一直線に空を舞う。

 理奈先輩は少しだけ杖を動かす。

 まるで炎の槍の先の一点を捉えようとするかのように。


 同時にもう1人が思いもよらない速度で一気に加速した。

 その3人目が2人の間に吹き上がるかのような壁をつくる。


「そこまでだよ」

 愛希先輩だった。

 手に持っているのは例の木製高級強力型魔法杖。

「理奈はやり過ぎ。これじゃ青葉がこうしてもしょうがないだろ」

「確かめたかったんですよ。青葉が攻撃魔法を捨てたって聞いて」


「という訳で、そろそろ色々事情を聞かせて貰えるとありがたい」

 仏頂面のルイス先輩が言う。


 更に、

「取り敢えず最強の救急班を連れてきたですよ」

という詩織ちゃん先輩とともに風遊美先輩と修先輩も現れた。

「2人合わせれば消し炭寸前からでも再生可能なのです。風遊美先輩に救命措置魔法を使って貰った後、修先輩に完全修復魔法をかけさせれば傷ひとつ残らないのです」


「ああ、よりにもよって……」

 ルイス先輩が心底困った表情になった。

 そして『どういう表情をすればいいの?』という感じの金井となんかため息をついている修先輩。


 そしてそれらをひととおり眺めた風遊美先輩がくすりと笑う。

「さあ、それでは状況整理をしましょうか。けが人はいないですね」

「強いて言えば私」

 愛希先輩がそう言って左手を差し出す。

「私は炎系は平気なんだけれど氷系は苦手なんだ。出来ればしもやけになる前に対処して欲しい」


「これは修さんの方が適役ですね」

「はいはい」

 修先輩が詩織ちゃん先輩と同じ最新型の金属杖を軽く振るう。

 真っ赤になっていた愛希先輩の左手が白く綺麗になった。


「おお、これは美容にも使えそうだな」

「はいはいそこ、脱線しない!」

「そうでした」

 肩をすくめる愛希先輩。


「では最初から事情を聞きますね。ここへ来る前、術式学園の話からですね」

 風遊美先輩が口を開く。

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