第139話 ルイス先輩による事前回避術

 その後美南先輩の怪談第2弾をやったりしていたので、朝は結構遅くなった。

 チェックアウト最終の10時ぎりぎりに貸別荘を出る。

 勿論屋根裏部屋の壁は直してきた。

 修先輩の魔法、本当にチートで便利だ。


「これから盛岡で少し遅い朝御飯で盛岡冷麺を食べ、中尊寺を見学した後に温泉へ向かいます」

 という事で食べて観光して長野の山間の駐車場に着いたのが午後3時少し前。

 川を渡って石畳の狭い道を4分程上り下りすると今日の宿だ。


 白い壁に白木っぽい柱。

 屋根の裏がきめ細かい木造の格子状。

 そんな色々と凝ったいかにも和風の造りだ。

 中へ入ると一段と凝った造りなのがわかる。

 ただ寺社の造りとはちょっと雰囲気が違う。

 何というか、昔の遊郭建築なんてあったらこんな感じだろうか。


 とりあえず3階の、ふすまを開けると16畳の部屋に皆落ち着く。

 今日の部屋はこの建物の上下方向。

 2階1部屋、3階1部屋、4階3部屋との事だ。

 なおこの棟は他に客間は無い。

 騒ぐの前提という訳では無いけれど。


「17時30分からこの宿の内部を案内するツアーがあります。10分前までにはこの部屋に戻ってくるようにお願いします」

 との沙知先輩の案内の後、皆さん動き始める。


 この時に動かないと部屋割りは自動で決まってしまう。

 そうは言っても慣れない1年生はどう動いたらいいかよくわからない。

 結果この部屋に残ったのはルイス先輩、詩織先輩、愛希先輩、ロビー先輩、僕の5人だ。


 寝る時には理奈先輩が上の部屋からやってきて、ロビー先輩と交代するとの事。

 今回は広報部関連一同が4階の10畳と6畳の続き部屋を抑えたらしい。

 何でも新刊に向けての作戦会議をやるそうだ。

 広報部関連一同とは、ジェニー先輩、ソフィー先輩、理奈先輩、沙知先輩、美雨先輩、典明。

 他人事ながら典明は大丈夫か気になる。


 なお青葉は美南先輩、エイダ先輩とともに4階の8畳間。

 最近青葉は闇魔法を練習している。

 炎魔法以外を色々試した結果、何故か闇魔法が一番しっくりきたとの事。

 この部屋割りはそのあたりの関係もあるのだろう。


 ちなみに2階の8畳間+次の間+風呂付きの部屋は由香里先輩、翠先輩、朱里先輩の大先輩3人がキープしている。

 あとは風遊美先輩、修先輩、香緒里先輩組がやはり4階の8畳間だ。

 さて、これから約2時間どうするか。


「とりあえず色々廻ったから、今日は風呂でも入ってのんびりするですよ」

 と詩織先輩。

 そうだな、ここのところ例の野湯以外の風呂は入っていない。

 だから普通の風呂に入るのもいいよな。


「なら着替えて行くか。鎌倉風呂とロマン風呂は夜中で入れ替えだから、まずは鎌倉風呂へ行こう」

 とルイス先輩が珍しく積極的に浴衣に着替えはじめるので、僕もそれにならう。

 そんな訳で鎌倉風呂へ。

 

 途中、ルイス先輩が自分からさっさと行動した理由を教えてくれた。

「ここは外湯も大浴場も基本的に男女別なんだが、貸し切り風呂だけは中から鍵をかければ自由に使えるんだ。前にそれで酷い目に遭った」


 そこからは聞かずとも理解できる。

 つまり魔女一同に勝手に混浴化した貸し切り風呂に引っ張られたと。

 いいことを聞いた。

 貸し切り風呂には近寄らないようにしよう。


 あ、でも典明は大丈夫かな。

 一番危険な面子に囲まれているような気がするけれど。

 まあでも、助けに行ったら逆にこっちが被害に遭う可能性もある。

 だから今は典明を見捨てよう。

 ごめん。


 そんな感じで向かった鎌倉風呂はひょうたん型の湯船が印象的だ。

 いかにも温泉の内湯という感じ。


「本当は浪漫風呂の方が雰囲気がいいんだけどな。交代制で今は女子の時間だ」

 という事らしい。

 なお残してきたロビー先輩はどうしているか不明。

 まああの人は独自の時間で動くし何も気にしないので大丈夫だろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る