第145話 工房作業は一段落
修先輩の説明は次の通り。
普通の魔法使いは
○ 魔力を別の効果に変換
して放出しているのに対し、僕は
○ 魔力を魔力のまま
放出して、対象に魔力が到達した時点で
○ 魔力で対象を直接的に操作・変化させている
のだそうだ。
そしてこの杖『モノセロス』は魔力そのものに対してのみ有効な杖だという。
「原型は魔力増幅機構の原理追求の為に作った回路なんだけれどね。魔力電池から魔力を取り出す際の新型増幅回路を杖に応用したんだ。まあ失敗作だったけれどね」
でも僕に対しては最高の杖だ。
さっきから色々使ってみているが応用範囲は広そう。
やり方によっては検定魔法に近い事も出来そうだ。
魔力を発信して跳ね返ってくる魔力を受信、それを視る事によって。
「何か一気に世界が広がった気がします。ありがとうございます」
「ただ普通の杖より癖が強いし危険な杖だから気をつけてな」
でもこれで色々な魔法が使える。
何か凄く嬉しい。
何か色々と魔法を試してみたいところだ。
「さて、朗人の魔法を試す前に新型の鋼材の生産施設を完成させるですよ」
あ、そうだ。
まずはその話だった。
「設計図は出来たのです。修先輩、この設計図で問題がないか検定魔法で確認をお願いするのです」
修先輩は画面を確認しながら、何枚かの図面を選んで印刷をかける。
「圧延後の熱処理過程のみの構造変更だな。なら……鋼材の幅を変えたのはこれでいいんだね」
「刃部分の鋼材保護なのです。その部分はカットして刃部分を保護するのです」
「ならOK。って要はこれを作れという事だろう」
詩織先輩はにやりと笑う。
「その通りなのです。修先輩の作業後に香緒里先輩に魔法付与して貰えば完成なのです」
「はいはい」
修先輩は印字した図面を持って工房の外に出る。
工房の右側には工房と同じ位の奥行きがある刀用鋼板製造施設がある。
前に説明を聞いたが、とんでもなく複雑かつ大きい機械だ。
機械と言うより施設という規模。
というか高専の学生会が精錬施設を所有しているのって異常だよな。
異常が多すぎて麻痺しているけれど。
「原料の耐火レンガもいつ増設していいように常備しているのですよ」
工房の片隅に積んであるレンガはそのための資材だったのか。
前に試しにピザを焼いた時にちょっと借りたけれど。
修先輩は毎度お馴染み最強杖を2本装備で構える。
「取り敢えず構造変更部分を作るぞ。あ、その前に香緒里ちゃん、付与魔法解除を頼む。場所は僕の視界から直接リンクしてくれ」
僕の視界からリンクしろとか凄い事言っているな。
それはどちらかの魔法なのだろうか。
それともこの前の合体魔法のようなものなのだろうか。
この2人の関係も何か色々ありそうだよな。
幼馴染みで恋人とは聞いているけれど。
「はいはい。これで大丈夫です」
「なら一気に構造変更するぞ。ちょっと埃が立つと思う」
目の前の施設の手前方向がずずずっと崩れ、そして一回り大きく組み直される。
レンガが材料の筈なのに継ぎ目が一切見当たらない。
まるで一枚の岩を削ったような造りだ。
「はい、付与魔法も完了です」
香緒里先輩の作業も完了したらしい。
「なら鋼材をくべておけば夕方には材料が出来ているのです。それを使って明日試作して、良ければ量産するのです。
そして時間は昼食なのです!」
確かに時計は12時30分を廻っている。
朝8時半頃から色々やっていたらお昼を過ぎてしまった。
やっている内容はとても半日どころではないのだけれど。
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