第146話 ここにもいました適合者

 昼食は既に食べられていた。

 というか麺類だったのでその場にいる人数しか作らなかったとの事。

 理由は伸びるから。

 そんな訳で昼食つくりからはじまる。


「早くするのですよ」

 待ちきれない人がいるので早いものを。

 大鍋に水を入れて塩入れて。

 さっき貰った杖を使って一気に熱湯にして。

 そして中に細めのスパゲティを入れる。


「朗人、今までと違う杖だね」

 愛希先輩が早くも杖の事に気づいた。


「なかなか使いやすい杖ですよ。後で色々試してみたいです」

 と返事しながら手抜きミートソース造りに取りかかる。

 フライパンに冷凍の牛挽肉と冷凍の炒めタマネギを入れ、魔法解凍&熱を加えて更にカットトマト缶詰を入れ適当に味を調える。

 乾燥バジルを振りかけ溶けるチーズを入れてかき回せば完成。

 所要時間は1.4ミリのスパゲティがゆだる時間と同じ7分少々だ。

 まあ思い切り手抜きだけれど。


「味はまあまあですが早かったので許すのです」

 と詩織先輩からも何とかOKが出た。

 詩織先輩分を考慮して5人なのに2.5キロの乾麺を茹でた。

 それでも綺麗さっぱり無くなった。


 どう考えても人数と量の計算が間違っている。

 でもそれもここの日常。

 また、片付ける時に修先輩がいれば片付ける作業も実質不要。

 例の魔法で片付けられるから。


 そんなこんなでお昼ご飯が終了。

 という訳で午後は魔法の方の訓練だ。

 といってもいつも訓練で使っているのは露天風呂の横。

 空飛ぶシリーズの駐機場所だけれども。


「どうする。今日はその杖で色々試してみたいんだろ」

「そうですね。でも取り敢えずいつもと同じ事をやらないと違いがわかりませんし」

 という事でいつもと同じように大きめの桶に水を汲む。

 まずは水温を上げ下げする処からスタートだ。

 いつもと同じ距離5メートルからスタート。


 お、さすがに新しい杖の威力は凄い。

 一瞬で沸騰状態まで持って行けるぞ。

 いつもは10秒以上かかるのに。


「凄いな。それもその杖の威力か?」

「そうですね。続いて冷却やってみます」

 僕は加熱より冷却の方が苦手だ。

 いつもなら沸騰状態から凍らせるのには1分以上かかる。

 それでも。


「お、こっちもあっさりと出来るか」

 ほぼ瞬時に完全に凍り付いた。

 うん、この杖の威力だなこれは。

 昨日と比べて僕の実力がそこまで変わった訳では無い。


「ちょっと悪いがその杖借りてみていいか。どんな能力か試してみたい」

「いいですよ」

 僕は愛希先輩に杖を渡す。


 愛希先輩は自分の練習用の杖と持ち替え、そして思わずにやりと笑う。

「お、これは出力が笑える程高いな」

 そう言って杖を構えて軽く念じるような動作をする。

 真上に向かってどーんという感じで火柱が上がった。


「更に大技!」

 ダイヤモンドダストが振りそそぎ、氷柱がどん、という感じでそびえ立つ。


「ちょっと待て、この杖洒落にならない。ヘリテージより数段上だぞ」

 えっ、ちょっと待てよ。

 確かこの杖、使う人を選ぶとか言っていなかったっけ。


「愛希先輩、その杖使えるんですか」

「今まで色々試した中では最高!これなら火や寒冷以外にも色々出来そうだ」

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