第70話 どうせならもっと面白く
ふと、ある事に気づいた。
台帳の注文品を見たのがきっかけだ。
この課題で注文可能な魔法部品と魔技大の通販で購入可能な魔法部品。
この2つを見比べて気づいた違いを思い出したのだ。
その考えそのものは実にしょうも無い。
単なる意地とかそういう次元だ。
でもその考えがどうしても頭から離れない。
なので前提となる事実を確かめるべく、詩織ちゃん先輩に尋ねてみる。
「詩織先輩すみません。この浮力調整具というのはそれほどメジャーな魔道部品では無いんですよね」
詩織ちゃん先輩は頷く。
「そうですよ。基本的には日本の特区限定でしかも数があまり多くないのです。今回は制作元とタイアップしたので特別供給なのです」
なるほど、確認の第1段階了解。
「詩織先輩やロビー先輩があえてこの浮力調整具を使わなかったのは、それが一般的では無かったからですね」
「そうなのですよ。でも今回はアイディアの方向性を伸ばすという意味で特別に調達可能部品として入れたのです。ただ国外へ持ち出すのは制作可能な人間が少なすぎるので困難なのです」
やっぱりだ。確認ほぼ終了。
そして最後に念の為というかダメ押し。
「浮力調整具を作っているのは、香緒里先輩ですね」
詩織ちゃん先輩は大きく頷いた。
「正解なのです。今でもオリジナルを制作可能なのは香緒里先輩だけなのです。例外としてうちの親父とか修先輩とかは同じ大きさで同じ性能の物に限ればコピー魔法で制作できるのですが。
でも何故わかったのですか」
気づいたきっかけは簡単だ。
「今までの優秀作が屋上に置いてあるじゃないですか。その中でこの浮力調整具を使っているのは香緒里先輩のスクーターだけなんです。
ただ学生会の飛行漁船もおそらく同じ魔法を使っている。
それを考えるとこれは香緒里先輩のオリジナル魔法の可能性が高い。
そう思ったんです」
詩織ちゃん先輩はにやりと笑う。
「正しいのです。さて、それに気づいた朗人君は、どうするつもりなのですか」
「魔力固定型のMJ管は、ハイパワータイプでも比較的汎用的な魔法部品ですよね」
「そうなのです。これはわりと世界中の特区で作れる技術なり魔法があるのです」
よしよし、予想通りだ。
「ならば昔の先輩方と同じ土俵で勝負します。
勿論色々な部品を無料で提供して貰っているし、工作機械も最新のがある。そういう意味では僕らは昔より遙かに有利です。でも材料くらいは魔技大のカタログや市販部品で揃えられる程度のもの限定、つまり先輩方と同じ条件で作ってみます」
「朗人はまだ魔法が使えない。それでもその意地を通す気ですか」
「その分は最新鋭の工作機械でカバーします」
詩織ちゃん先輩は右手で派手にサムズアップする。
「効率とか結果優先的な発想で考えるとその決断は愚かなのです。でも私はそういう愚かな意地は大好きなのです」
僕もサムズアップで返す。
「という訳で、この浮力調整具は後で買い取ります。何年かかるかわかりませんが」
「その心配は無用なのですよ。朗人が注文した浮力調整具は一応汎用サイズで、本来はあの飛行スクーターの交換部品なのです。このまま梱包して会社に置いておけば問題無いのです」
ほっと一息。
実は相当高価だろうと思っていたのだ。
「ならその代わりになる魔法部品の発注を受けるのです。学生会特権で特別に高速調達してあげるのです」
「ならば魔力固定型MJ管フィン付きタイプ、No25-10Fを8本。これは魔技大でも標準部品ですよね」
詩織ちゃん先輩は頷いた。
「間違いなく3大特区なら購入可能な魔法部品なのです。なら5分ほど待つのです」
僕が使わなくなった浮力調整具を持って詩織ちゃん先輩の姿が消える。
何処かに調達の当てがあるのだろうか。
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